NXP Semiconductorsは、AI/機械学習開発ソフトウェア「eIQ」に、新たな2つのツールを追加した。新機能を活用することで、ローエンドマイコンから高性能アプリケーションプロセッサまで、幅広いエッジ製品向けプロセッサでのAI利用が容易となる。
NXP Semiconductors(以下、NXP)は2024年10月、AI(人工知能)/機械学習開発ソフトウェア「eIQ」に、新たな2つのツールを追加した。新機能を活用することで、ローエンドマイコンから高性能アプリケーションプロセッサまで、幅広いエッジ製品向けプロセッサでのAI利用が容易になる。
新たに追加したツールの一つは、同社が供給する「MCX」や「i.MX RT700」といったMCUレベルで処理できる時系列ベースの機械学習モデル開発と展開を容易にする「eIQ Time Series Studio(TSS)」である。もう1つは、より高性能なアプリケーションプロセッサ「i.MX95」などに対応したもので、RAG(検索拡張生成)による最適化を備えた「GenAIフロー」である。
eIQには、NXP製のMCUやMPUを用いて、機械学習アプリケーションを構築するための開発ツールやユーティリティ、ライブラリーなどが含まれる。これを用いれば、ユーザーが保有するデータを用いて機械学習モデルを作製したり、ユーザーが保有する機械学習モデルを利用したりすることができる。もちろん、ユーザーが使用中の開発ツールやユーティリティもそのまま使うことができるという。
新たに追加したTSSは、自動機械学習機能「autoML」を備えている。このため、電圧や電流、温度、振動、圧力など、収集した生の時系列データから特徴的な部分を抽出し、エッジ側でAIモデルを構成できる。この時、生成されたいくつかのモデルの中から、使用するMCUの性能やフラッシュメモリ容量、期待する精度基準などの条件を満たすAIモデルを選べば、カスタマイズされたAIモデルを短時間で構築できる。
TSSはこれらの機能により、データキュレーションや可視化、分析、モデルの自動生成、最適化、エミュレーションおよびデブロイ(展開)といった作業を簡略化できる。しかも、AIに関する専門知識がないソフトウェア開発者でも、時系列データを「異常検知」や「分類」「回帰」といったタスクに使用できるライブラリーを比較的容易に開発できるという。
もう1つのGenAIフローは、「i.MX95」などを搭載するエッジ製品上で生成AIアプリケーションを利用できるようにするソリューション。LLM(大規模言語モデル)などの生成モデルを最適化することが可能である。また、RAG(検索拡張生成)機能を搭載しており、ドメイン固有の知見やプライベートなデータに基づいてモデルを安全に最適化できる。
例えば、家電製品の説明書に記載されたテキストを小さなセグメントに分割し、これをRAGデータとして、LLMとは別のデータベースに格納しておく。このデータでLLMをトレーニングすれば、タスクに合わせLLMを簡単にカスタマイズでき、エッジ側で特定タスクの実行方法やメンテナンスの方法などを自然言語で表示することができる。
現在、入出力は音声のみの対応だが、将来的にはマルチモーダル(画像や動画)センサーフュージョンにも対応していく予定。
なお、TSSはCPU処理対応のバージョンを既にウェブ上で公開している。NPU(ニューラルプロセッシングユニット)処理対応のバージョンは2025年に出荷予定。GenAIフローについても2025年初旬に公開する予定だ。
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