図2に、ASMLの売上高、営業利益、営業利益率の推移を示す。ASMLは、2016年頃からEUV(極端紫外線)露光装置の出荷を開始した。次に、2019年に、TSMCが7nm+に世界で初めてEUV露光装置を量産適用した。さらに、2023年12月には、米IntelにHigh NA版が導入された。
以上を頭に入れて、ASMLの業績推移を見てみると、世界半導体業界にEUV露光装置が普及するにつれ、ASMLの売上高も営業利益も急拡大しているように見える。また、営業利益率も25%から30%前後を維持するようになっている。
ASMLの2024年Q3の決算発表によれば、確かに、2023年(275.6億ユーロ)から2024年(280億ユーロ)にかけて、売上高はほとんど成長しない。しかし、前掲の日経新聞の報道で、「2025年12月期の売上高の見通しを、従来の最大400億ユーロから同350億ユーロへ引き下げた」ことが「ASMLショック」の一因になっているということには納得できない。というのは、2025年が350億ユーロだったとしても、2024年からは25%も成長することになるからだ。これで一体何が問題だというのだろうか?
今度は、ASMLの四半期の売上高、営業利益、営業利益率の推移を見てみよう(図3)。2024年Q1は売上高も営業利益も落ち込んだが、その後、回復に転じ、同年Q3には四半期として過去最高の売上高(74.7億ユーロ)、過去最高の営業利益(24.4億ユーロ)を計上している。営業利益率も32.7%と、高水準となった。さらに、来四半期Q4には、これまた過去最高の売上高(88〜92億ユーロ)が予測されている。このように、四半期の業績を見ても、十分高水準にあり、なぜ「ASMLショック」と報道されるのか、筆者には理解できない。
ここまで見てきたように、ASMLの受注額や売上高のフォアキャストなどに悲観して、「ASMLショック」と報道されることには、筆者は大きな違和感を持っている。
それよりも、筆者には気になることがある。それは、ArF液浸の出荷台数(出荷額)が急増していること、そして、ASMLの中国向け出荷額が増大し続けていることである。次ページから詳しく見てみよう。
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