図4に、ASMLの四半期の露光装置別に出荷台数を示す。ここで最近、筆者が第1に注目しているのは、ArF液浸の出荷台数の挙動である。2022年Q3頃までは、ArF液浸の四半期の出荷台数は、おおむね20台だった。
ところが、2023年Q2に約2倍の39台に急増した。その後、2024年Q1にアベレージの20台まで減少したが、同年Q2以降、再び上昇し始め、Q3には過去最高に迫る38台を出荷している。
今度は図5に、ASMLの四半期の露光装置別の売上高(比率)を示す。ここから、ASMLの露光装置の柱は、EUVとArF液浸であることが分かる。特に、ArF液浸の出荷台数が増大した2023年以降は、ArF液浸の売上高比率がEUVを上回ることも珍しくなくなった。
そして、図5Bの露光装置別の売上高で見てみると、2023年Q1に16億ユーロだったArF液浸は、同年Q2に27.5億ユーロに急増する。その後、2024年Q1に15.5億ユーロまで下がるが、同年Q2以降再び上昇に転じ、Q3には過去最高の28.4億ユーロを記録する。これは、図4で説明した出荷台数の挙動と一致する。
では、上下動はあるものの、大量にArF液浸を購入しているのは、一体どこの誰なのか?
米国は、2022年10月7日に、中国に対する厳しい輸出規制を発表した。半導体製造装置に限って言うと、中国の先端半導体メーカーには、米装置メーカーのApplied Materials、Lam Research、KLAが輸出できないことになった(拙著『なぜTSMCが米日欧に工場を建設するのか 〜米国の半導体政策とその影響』、2023年1月19日)。
ここで、先端半導体とは、16/14nm以降のロジック半導体、ハーフピッチ18nm以降のDRAM、128層以上の3次元NAND型フラッシュメモリと定義されている。これに該当する中国の半導体メーカーには、ファウンドリーのSMIC、DRAMのCXMT、3次元NANDのYMTCの3社がある。
そして、この米国の輸出規制に、日本とオランダが足並みをそろえることになった。その中で、オランダのASMLは、既に中国にEUVの出荷を停止している上に、2023年9月1日からは、「NXT:2000」シリーズ以降のArF液浸の輸出にはオランダ政府の許可が必要になった(注)。加えて2023年10月、米国は、「NXT:1970i」および「NXT:1980i」に米国製部品が含まれているという理由で、ASMLの出荷を一方的に制限し始めた(ロイター、2024年9月6日)。
注)2024年1月1日より、ASMLはU.S. 1017 Act.(米国1017法)に従い、「NXT:2000i」以降のArF液浸の輸出に米国ライセンスを取得しなければならなくなった(DIGI TIMES Asia、2024年11月7日)
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