製品設計/開発のアウトソースサービスを手掛けるクエスト・グローバル・ジャパンは都内で記者説明会を開催。日本の半導体開発では「必要な人材が足りていない」と語った。背景には、半導体設計がますます高度化、複雑化していることや、海外企業と英語で交渉する必要が増えていることなどがある。
プロダクトエンジニアリングサービスを手掛けるクエスト・グローバル・ジャパンは2024年10月、記者説明会を開催し、同社の事業内容や半導体回路設計における課題などを語った。
クエスト・グローバル・ジャパンは、シンガポールに拠点を置くQuest Globalの日本法人。Quest Globalは1997年に設立され、2万人の従業員を抱える。半導体、自動車、鉄道、エネルギー、医療などの分野で製品設計/開発を支援するアウトソースサービスを提供する。製品開発を自国(ローカル)と海外(オフショア)のエンジニアがサポートする独自の「ローカル・グローバル・モデル」を展開する。日本には450人ほどのエンジニアが在籍している他、オフショア(海外拠点)から約1900人のエンジニアもサポートしている。
クエスト・グローバル・ジャパンの社長を務める貫名聡氏は、Quest Globalの特徴について「重要顧客にフォーカスし、長く深く関係を構築していくこと」だと強調する。「単に開発をサポートするのではなく、開発におけるメソドロジーを作って顧客に提案するのがわれわれの仕事だ。10年以上、パートナーシップを締結している顧客企業も多い。日本では近年特に、自動車と半導体の分野が大きく成長している」(貫名氏)。現在、日本の半導体メーカーとしては4社を顧客に持っている。
半導体業界サービスについては、構想策定から設計、組み立て、量産まで一貫してサポートすることが可能だ。世界で3000人以上のエンジニアが、エンド・ツー・エンドでサポートしているという。
クエスト・グローバル・ジャパンの半導体部門でゼネラルマネージャーを務める浜崎博幸氏は、「半導体回路の設計や開発において、日本は本当に必要な人材が足りていないということを痛感している」と語る。
その背景にある課題として、浜崎氏は3つを挙げる。まずは、ICに機能を統合することがより複雑になっていること。CPU/GPUのマルチコア、マルチクラスタは当然になっていることに加え、昨今はAI(人工知能)演算を担うNPU(Neural Network Processing Unit)の統合も求められるようになっている。コア間通信や電力対策などの機能が複雑になり、協調動作が難しい。
「マイコンにまでNPUを搭載することが当たり前になりつつある。ソフトウェアスタックを積み上げて開発する必要があり、そうなると従来のシミュレーションでは対応できず、エミュレーターが必要になるなど、ツールも変わる。“作るもの”が格段に難しくなった。開発に携わっていると勉強時間を確保しにくくなっている。半導体設計から実装までできるエンジニアは非常に限られている」(浜崎氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.