欧州は、RISC-Vを活用した技術開発を加速させている。半導体業界におけるアジアへの依存度を下げて欧州の技術的独立を推進するねらいだ。
バルセロナスーパーコンピューティングセンター(BSC:Barcelona Supercomputing Center)は、海外半導体メーカーへの依存度を低減する欧州の取り組みの最前線にいる。BSCはそうした取り組みに注力し協業を促進することで、欧州の半導体エコシステム強化やサプライチェーン保護、技術的独立の推進などを目指す戦略において重要な役割を担っている。
BSCの組み込みシステムグループで共同ディレクターを務めるJaume Abella氏とFrancisco Cazorla氏は、米EE Timesの独占インタビューの中で、欧州の未来におけるRISC-Vとオープンソースアーキテクチャの重要性を強調した。
両氏は、「RISC-Vは、半導体業界における欧州の独立を実現する上で非常に重要だ。欧州以外のメーカーが管理する独自技術に依存せずに、欧州のニーズに合わせたチップを設計できるからだ。このような独立性は、イノベーションや欧州サプライチェーンの安全性を実現する上で、必要不可欠なものである」と述べている。
「AR2SECプロジェクト」(正式名称:High-Performance Architectures for Critical Sectors)は、スペインの科学イノベーション省が資金を提供する2年間の取り組みだ。RISC-Vアーキテクチャをベースとした、安全かつ適応性の高いプロセッシングアーキテクチャの構築を目指している。このようなアーキテクチャは、自動車や航空電子工学、ロボティクスなどの業界の厳格な安全性/性能要件にも対応するという。
AR2SECはコンピューティングシステムの設計において、以下の要件を検討する。
Abella氏は、「自動車や航空宇宙などのクリティカルな用途に、モバイルデバイス向けに設計された市販プロセッサを使うわけにはいかない。安全要件ははるかに厳格だ。このような業界のチップは、あらゆる条件下で高い信頼性と予測可能性が求められる。そこで、AR2SECの出番だ」と述べる。
AR2SECの主な目的は、さまざまな業界に適応するモジュール型の再利用可能なハードウェアを開発することだ。このプロジェクトでは既存技術を再利用することでコストを最小限に抑え、市場投入期間を短縮することを重要視している。Abella氏は、「われわれはゼロから始めるのではなく、可能な限りコンポーネントを再利用することを目指す。もともと携帯電話のようなマスマーケット向けに設計された半導体チップを利用して、クリティカルな用途向けに適応させるのだ。この手法によって、既存のイノベーションを活用しながら、自動車や航空宇宙分野の高い安全性/認証規格に準拠することができる」と語る。
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