BSCは、RISC-Vチップ設計における深い専門知識を活用し、AR2SECプロジェクトにおいて重要な役割を担う。BSCは、RISC-V技術を専門とする約300人の研究者を擁していて、バルセロナをこのオープンソースアーキテクチャの世界的ハブにすることを目指す。BSCのディレクターであるMateo Valero氏は2024年初めに、EE Timesの取材の中で、「RISC-Vは、『ハードウェアのLinux』だ。どの企業のものでもないオープンソースのISA(命令セットアーキテクチャ)で、柔軟性とセキュリティ向上に役立つ。欧州にとって魅力的な選択肢だ」と語っている。
BSCは、SoC(System on Chip)向けのプロセッサコアの開発などで、AR2SECに多面的に貢献している。BSCが開発したコアは、柔軟で高性能な設計なので、自動車や航空宇宙など、さまざまな業界の多様なニーズに対応できる。Abella氏は、「われわれは、幅広いアプリケーションに適応する汎用性の高いプラットフォームを構築している。同じコアアーキテクチャを、自動運転システムから航空電子工学まで、あらゆる分野に使用でき、これらの分野で求められる安全性と信頼性を維持することができる」としている。
AR2SECは、安全で高性能なチップの開発という課題に取り組むために、欧州の企業や研究機関が結集した共同プロジェクトだ。例えば、GTD Science Infrastructures & Roboticsは、特に核融合エネルギーアプリケーションにおけるシステム統合と制御システムの専門知識を活用している。Clue Technologiesは、航空宇宙分野向けの安全な通信モジュールの開発に注力し、低遅延性と高信頼性を実現している。TECHNICA Electronicsは、厳格な安全性/性能基準を満たす実際の自動車ユースケースを提供している。Fent Innovative Software Solutions SL(FentISS)は、「XtratuM」ハイパーバイザーを含む重要な低レベルソフトウェアを提供し、さまざまな重要分野における安全性と認証を確保している。
Abella氏は、これらの協業の重要性を強調し、「Clue Technologiesは航空電子工学、TECHNICAは自動車というように、各パートナーが独自の専門知識を提供し合っている。こうしたコラボレーションによって、AR2SECのソリューションは専門的根拠に基づいた、対象とする業界に適したものになっている」と指摘する。
AR2SECは、協調的なアプローチを優先することで、革新的なだけでなく、以下のような、さまざまな業界の進化するニーズに沿ったソリューションの開発を目指している。
「これらのコンポーネントは、プロジェクトの4つのユースケースでテストしている。また、産業界での使用に向けてCollins Aerospaceに移管していて、欧州のプロジェクトや産業界でより多くの機会を創出し、RISC-Vに関心のあるグループと知識を共有している」(Abella氏)
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