今回から「2024年度版 実装技術ロードマップ」の第2章「第2章:注目すべき市場と電子機器群」の内容を紹介していく。
電子情報技術産業協会(JEITA)が2年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2024年度版 実装技術ロードマップ」(PDF形式電子書籍)を2024年6月に発行した。すでに6月11日には、ロードマップの完成報告会を東京で開催している(本コラムの第462回で既報)。
本コラムではこのほど、ロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、前回の2022年度版に続いて今回の2024年度版も概要をご紹介できるようになった。この場を借りて同委員会の皆さまに深く感謝したい。
上記の経緯を経て、本コラムの前々回から、2024年度版のロードマップ概要をシリーズで紹介している。前々回はロードマップの全体概要を述べた。前回は、本論である「第2章:注目すべき市場と電子機器群」の内容を前回版(2022年度版)と比較し、違いをまとめた。今回からは第2章の具体的な内容を簡単に紹介していく。最初は第2章第2節「メディカル・ライフサイエンス領域の市場分析とシーズ技術の活用」を扱う。
第2章第2節「メディカル・ライフサイエンス領域の市場分析とシーズ技術の活用」では、序文(プロローグ)をご報告する。まずはメディカル・ライフサイエンス領域の市場規模を見ていこう。市場規模の目安として製薬大手3社の売上高を調査した。2022年の売上高はトップのファイザーが1003億米ドル、2位のロッシュが663億米ドル、3位のメルクが593億米ドルである。単純合計では2259億米ドルとなる。
同年の半導体大手3社の売上高はトップのサムスン電子が656億米ドル、2位のインテルが584億米ドル、3位のSK hynixが362億米ドルである。単純合計すると1602億米ドルとなり、製薬大手3社合計の約7割にとどまる。もちろんこれらの数値は市場規模を示すものではないものの、製薬業界でトップクラスの企業が売上高では半導体のトップ企業を超えていることには、留意しておくべきだろう。
実装技術ロードマップを作成したJEITAのJisso技術ロードマップ専門委員会は、メディカル・ライフサイエンス産業の巨大な市場における潜在ニーズ(市場への参入)と、電子デバイス技術とバイオ技術の融合というシーズ創出の2つの観点から調査・検討した結果をまとめた。
メディカル・ライフサイエンス市場への参入という観点からは、参入障壁が比較的低いとされる「低侵襲医療技術」「検査技術」「バイオロジー研究用製品」「ヘルスケア製品」に着目した。具体的な事例としては「カプセル内視鏡」「細胞外小胞検査」「新型インフルエンザウイルス検査」「スマートウォッチ」を取り上げてケーススタディーを実施した結果をロードマップ本体に掲載した。
シーズ創出の観点からは、メディカル・ライフサイエンス産業が保有する数多くのシーズ技術を電子デバイス技術と融合することで、新たな機能や付加価値などを創り出す可能性を検討した。具体的な事例としては、シーズ技術と電子デバイス技術を融合させた「バイオセンサ」のケーススタディーを報告する。
(次回に続く)
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