2024年も間もなく終わりを迎えます。そこで、EE Times Japan編集部のメンバーが、半導体業界の“世相”を表す「ことしの漢字」を考えてみました。
筆者が選んだ漢字は「揺」です。
2024年の日本は、能登半島を襲った大地震で幕を開けました。北陸地方は、特に電子部品メーカーの拠点が集中するエリアで、各社は元旦から被害状況の確認に追われました。サンケン電気の志賀工場(石川県志賀町)は被災によって閉鎖することになってしまいましたが、それでも、半導体/電子部品メーカーがコロナ禍のようにサプライチェーンに混乱を来すこともなく部品を供給し続けられたのは、経験や備え、日ごろの訓練などがあったからだと思います。
今や半導体産業を大きく左右する政治分野でも、国内外でさまざまな動きがありました。国内では、自民党半導体戦略推進議員連盟で会長を務めていた甘利明氏が、2024年10月の衆議院選挙で落選。政府の半導体支援がこの先どうなるのかと、業界関係者の間では少なからず動揺が走りました。米国では、11月の大統領選挙でドナルド・トランプ氏が再選。スイングステート(揺れる州)での激戦を制しての勝利となりました。
長きにわたり続いている米中対立も、当面収まりそうにありません。トランプ氏が再選したなら、なおさらです。2024年3月には、中国政府が、政府機関向けのPCやサーバにIntelとAMDのCPUを使用することを禁じるガイドラインを発表しました。7月には、米国による対中規制がさらに厳しさを増すと報じられています。一方で、NVIDIAが、米国の規制にかからない中国向けAI(人工知能)半導体を開発したり、ASMLの地域別売上高は中国が圧倒的に高かったりと、政府の方針とビジネスの実態には当然のごとく大きな乖離があることも明らかになりました。日本を含め世界の半導体業界は、米中の規制と、自身のビジネスとのはざまで難しいかじ取りを迫られています。米国の対中規制の意義にも揺らぎが見え隠れします。
そしてこの1年を通し、最も揺れに揺れ続けたのがIntelではないでしょうか。1月のAltera分離に始まり、業績の低迷、リストラ、工場建設の延期と続き、12月には前CEO(最高経営責任者)のPat Gelsinger氏が志半ばで退任しました。同氏の戦略は、ファウンドリー事業の開始を含めた「IDM 2.0」などで終始一貫していたものの、Gelsinger氏以前の数代のCEOによる迷走でIntelの基盤は揺らぎ、同社は現在、危機的な状況に陥っています。業績も地位も大きく揺らいでしまったIntelはどう立ち直るのか――。まずは次のCEOの就任が待たれます。
国際情勢や世界経済の先行きがますます不透明になる中、半導体ビジネスの難しさや複雑さは、2025年以降も増していくと思われます。カーボンニュートラルやDX(デジタルトランスフォーメーション)など、あらゆるメガトレンドの要を担う半導体の存在意義だけは、ただ一つ、揺らがないものであってほしいと願っています。
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