クラウドコンピューティングの概念が登場したのは、1999年のことだ。この年には、CompaqのGeorge Favorolo氏とSean Sullivan氏がこの「クラウドコンピューティング」という用語を考案し、HPの最高経営責任者(CEO)であるLew Platt氏がコンピューティング能力をサービスとして販売する取り組みを始め、Salesforceが設立された。
しかし、半導体に影響が及び始めたのは、2006年にAWSと汎用クラウドサービスプロバイダー(Cloud service provider、CSP)が台頭してからだ。多国籍のCSPは、DPUのような特殊なワークロード/タスク向けに最適化されたプロセッサや、CPUのような既存プロセッサのカスタマイズ版の開発を正当化できるだけの、十分な規模の新しいクラスの企業を構成した。つまり、CSPの巨大規模のインフラが、上述した全ての技術において、市場投入への道を切り開いたのだ。
半導体が急激な方向転換を遂げた2006年から十数年が経過したが、これらの技術はほとんどがまだ初期段階にある。消費電力削減やパフォーマンス向上のためにカスタムコンピューティングを使用する方法は、以前として主に大規模顧客の一部の製品に限定されている。
将来的にはカスタムソリューションを求める顧客が増えると予想される。「カスタム」といっても、完全に独自のカスタム設計からパフォーマンス向上のためのファームウェアの変更までさまざまなものが含まれるが、最終的にはメーカーとユーザーがそれぞれ独自の特徴を備えた半導体を持つことになる。そして、その多くはチップレット設計によるものだろう。
こうした設計の原則はより広範な製品にも適用される。第5世代移動通信(5G)インフラ用のカスタムベースバンドコントローラー、サーバのメモリ容量を増強するCXL(Compute Express Link)コントローラー、NIC(Network Interface Card)コントローラーは既に生産されている。将来的にはほとんど全てがカスタム化するだろう。
製品の種類も増えるだろう。GPUやXPU、DPUは、市場に登場する新しいチップのカテゴリーの第1波だった。PCIeリタイマーとCXLコントローラーは、相互接続の改善に重点を置いた第2の新たな波を構成する。
半導体業界の最初の50年間は、マザーボード上のチップの数を減らすことに重点が置かれることが多かったが、今後はさまざまなチップや機能を1つのパッケージに統合したシステムインパッケージデバイスとともに、ボードに搭載されるチップの数が増加する時代を迎えていく。
別の言い方をすれば、これからは「ムーア(Moore)」から「モア(More)」、つまり「より(more)多くの」顧客、「より(more)細かい」カスタマイズ、そして「より(more)多様な」半導体の時代になるということだ。
【翻訳:滝本麻貴/田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.