図7は、2025年から2030年にかけて、ロジック(成熟ノードと先端ノード)、DRAM、NANDに使用されるウエハー需要がどの程度増加するかを示したものである。ここでは、3種類のケースに分けて予測が行われている。
ケース1):2022年を基準とし、ロジックに関して28nmより前(つまり32nm以前)を成熟ノード、28nm以降を先端ノードとした場合の予測
ケース2):2024年を基準とし、ロジックの分類はケース1と同様に、28nmより前(つまり32nm以前)を成熟ノード、28nm以降を先端ノードとした場合の予測
ケース3):2024年を基準とし、ロジックの分類を変更し、7nmより前(つまり10nm以前)を成熟ノード、7nm以降を先端ノードとした場合の予測
言うまでもなく、ケース1では生成AIの影響および2023〜2024年の半導体不況の影響は考慮されていない。一方、ケース2とケース3では、これらの影響が反映されている。そしてケース2とケース3の違いは、先端ノードと成熟ノードの境界をどこに設定するかという点にある。
では、以下で、それぞれの詳細を見ていこう。
ケース1)
図7の1)の上図に着目しよう。2025年時点でのウエハー需要は、月産で、28nmより前の成熟ノードのロジックが670万枚、28nm以降の先端ノードのロジックが210万枚、DRAMが190万枚、NANDが210万枚、合計で1280万枚となっている。
その5年後の2030年におけるウエハー需要は、月産で、28nmより前の成熟ノードのロジックが860万枚、28nm以降の先端ノードのロジックが320万枚、DRAMが220万枚、NANDが260万枚、合計で1660万枚になると予測されている。
これにより、2025年から2030年の5年間で、合計のウエハー需要は、図7の1)の下図に示されているように、1660万枚−1280万枚=380万枚増加することになる。これを1年当たりに換算すると、380万枚÷ 5年 = 76万枚(760千枚)の需要増加となる。
さらに、各種半導体のウエハー需要増加は、月産で、28nmより前の成熟ノードのロジックが380千枚、28nm以降の先端ノードのロジックが220千枚、DRAMが60千枚、NANDが100千枚となる。
ケース2)
今度は、生成AIの影響が反映された場合のウエハー需要を見てみよう。図7の2)の上図に着目する。2025年時点で、ウエハー需要は月産で、28nmより前の成熟ノードのロジックが580万枚、28nm以降の先端ノードのロジックが200万枚、DRAMが170万枚、NANDが170万枚、合計1120万枚となっている。
その5年後の2030年のウエハー需要は、月産で、28nmより前の成熟ノードのロジックが750万枚、28nm以降の先端ノードのロジックが320万枚、DRAMが250万枚、NANDが190万枚、合計1510万枚になると予測された。
ケース1)との違いは、月産で、DRAMが220万枚から250万枚に増える一方で、成熟ノードのロジックが860万枚から750万枚に、NANDが260万枚から190万枚に減少することである。
2025年から2030年の5年間で、合計のウエハー需要は、図7の2)の下図に示されているように、月産で1510万枚−1120万枚=390万枚、増大したことになる。その結果、1年当たりに換算すると、390万枚÷5年=78万枚(780千枚)の需要増大となる。
そして、各種半導体のウエハー需要増大は、月産で、28nmより前の成熟ノードのロジックが340千枚、28nm以降の先端ノードのロジックが240千枚、DRAMが160千枚、NANDが40千枚ということになる。
注目すべき点は、生成AIの影響を考慮したケース2)では、ケース1に比べてウエハー需要(月産)が、先端ノードのロジックが220千枚から240千枚に増え、DRAMが60千枚から160千枚に急増する一方で、成熟ノードのロジックが380千枚から340千枚に減り、NANDが100千枚から40千枚に激減することである。
生成AIの効果によって、NVIDIAのGPUなどのAI半導体の需要が高まることにより、先端ノードのロジックとHBMなどのDRAMのウエハー需要が増大することが予測されていると言える(DRAMのウエハー需要増大については後述する)。
ケース3)
ケース3)は、ロジックについて、成熟ノード(7nmより前)と先端ノード(7nm以降)の線引きを変更しただけであるため、2025年から2030年の5年間で、1年当たりの平均の半導体全体のウエハー需要増大は月産78万枚(780千枚)で、ケース2)と変わらない。
そして、図7の3)の下図に示されている通り、7nmより前の成熟ノードのロジック(メインストリームと書かれている)が、月産で380千枚、7nm以降の先端ノードのロジックが200千枚、DRAMが160千枚、NANDが40千枚となっている。
ここまでウエハー需要とその増大の予測を見てきたが、生成AIの影響が大きく反映され、ウエハー需要が大きく増える半導体はDRAMであることが分かった(逆にNANDのウエハー需要は激減する)。それでは、どのようなDRAM用ウエハー需要が増大するのだろうか。
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