図8に、NVIDIAのAI半導体のRoadmapとサーバ用DRAMのウエハー需要を示す。
まず、図8の左の図を見ると、2022年頃にNVIDIAがリリースしたデータセンター向けの「Hopper」(GPUのH100を搭載)は、94GBのHBM3を搭載していたが、2023年のHopperには141GBのHBM3eが搭載されていることが分かる。
その後、2024年には、「Blackwell」(GPUのB200を搭載)をリリースし、それには192GBのHBM3eが搭載され、2025年には288GBのHBM3eを搭載したBlackwell Ultraがリリースされる予定である。このように、NVIDIAのGPUに搭載されるHBMの容量は年々増大していく。
その結果、サーバ用DRAMのウエハー需要は、図8の右の図のようになると予測されている。それによると、標準的なサーバ用DRAM(DDR、Double-Data-Rateの略)のウエハー需要は、2020年から2030年まであまり変わらない。一方、AIサーバ用のDRAM(DDR)のウエハー需要は、2023年以降、急速に増大していき、2030年には標準的なサーバ用と同じ規模を持つようになる。さらに、DRAMを縦に積層したHBM用ウエハー需要も、2023年以降、急増していき、AIサーバ用のDRAM(DDR)と同程度の規模を持つようになる。
つまり、ざっくり言うと、2030年のDRAM用ウエハー需要は、標準的なサーバ用DDR:AIサーバ用DDR:HBM=1:1:1の割合になると予測されている。要するに、DRAM用ウエハー需要の3分の2がAIサーバ用ということになる。
このような結果、本格的な生成AI時代には、DRAM用ウエハー需要が急増することになる。
さて、図7において、2025年〜2030年にかけて、世界のウエハー需要増加は毎年、月産78万枚(780千枚)と予測されている。しかし、現在、世界各国・各地域で半導体製造能力を確保しようという動きが活発になっており、その結果、世界半導体のウエハーキャパシティは図7で示された予測よりも大きくなる可能性が高い。
これに拍車を掛けているのが、各国/地域における補助金の乱発である(図9)。例えば、米国CHIPS法で520億米ドル、欧州CHIPS法で480億米ドル、インドが100億米ドル、中国の半導体基金の第3フェーズが480億米ドル、日本も260億米ドルとなっているがRapidus支援などのために2030年までに10兆円という話も聞こえてくる。
このような補助金乱発もあって、2027年までに建設される半導体工場数を見てみると、米国で18工場、欧州/中東で12工場、アジアではなんと78工場となっている(図10)。つまり、世界全体で、2027年までに108工場の建設が予定されている。となると、2030年までにその倍、すなわち200工場が建設される可能性がある。
図11は、どのような半導体メーカーが、どこに工場を建設しようとしているかを示している。TSMC、Samsung、Intel、SK hynix、Micron、そしてRapidusなどが半導体工場を建設する計画を立てている。これらの半導体工場は、資本主義に基づいた経済原理だけでなく、他の動機によっても建設されようとしている。
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