組み込み技術の展示会「embedded world 2025」(ドイツ・ニュルンベルク)初日の基調講演でAlteraのCEO、Sandra Rivera氏が登壇。拡大を続けるエッジAIの展望などについて語った。
組み込み技術の展示会「embedded world 2025」(ドイツ・ニュルンベルク)が2025年3月11日(現地時間)に開幕した。会期は同月13日までの3日間で、46カ国から集まった1180社超の出展者が、組み込みシステム開発の分野における最新トレンドを紹介している。ことしも主要なテーマとしてAIが挙がる。初日の基調講演では、AlteraのCEO、Sandra Rivera氏が登壇し、拡大を続けるエッジAIの展望などについて語った。
Rivera氏は冒頭、「ことし、ほぼ全ての人が話題にするトピックはAIだ。AIはあらゆるものを変革し、あらゆる規模の企業が効率性、顧客体験の向上、意思決定の迅速化のために生成AIモデルを急速に導入している」と言及した。
2024年だけでも、Meta、Amazon、Microsoft、GoogleらビックテックがAIインフラの構築に合計3000億米ドル以上を投資しているほか、Appleも最近、今後4年間で5000億米ドル以上を投資すると発表したことに触れ、「われわれに投げかけられる疑問は、こうしてトレーニングされたモデルが、どこへ向かうのかということだ。何百万もの最適化されたモデルが事実上あらゆる場所でデータを処理するようになる中で、AIの今後はどうなるだろうか」と述べた。
同氏はさらに、2012年に登場したAlexNetがAI開発の爆発的な進展を引き起こし、同時に半導体製造技術、ネットワーク、メモリ技術の進歩、ソフトウェアソリューションおよびツールの革新がAIの発展を後押ししてきたこと、そしてTransformerベースのディープニューラルネットワークの発展による生成AI革新に触れ、「われわれは、生成AIとインテリジェントコンピューティングが生活のあらゆる場所に急速に浸透しつつあるAI時代を迎えている」と説明。このシフトを実現する鍵がエッジへのAI導入(インテリジェントエッジ)だとした。
市場調査会社Gartnerは今後1年以内に企業データの約75%がエッジで処理されると予測しているという。このエッジへのシフトを加速する要素として、Rivera氏は「コスト」「速度(低レイテンシ)」「セキュリティ」の3つを挙げた。
Rivera氏は、「エッジとクラウド間でデータを移動するプロセスはコストがかかる。エッジAIは、データ転送を制限し、操作をインテリジェントなエンドポイントデバイスにスケールダウンできるようにし、大幅なコスト削減を実現する」と説明。また、速度については、大量のデータをクラウドに送受信する必要があると、多くのユースケースが非現実的になる。例えば工場のロボットは、ロボットと一緒に作業している人間の安全確保のため、リアルタイムな対応が求められる。セキュリティについても「規制とIPセキュリティの両方の理由から、データをオンプレミスや特定のエリアで保持する必要がある場合が多い」と述べ、これらがエッジへのシフトの要因になっているとした。
ただ、こうしたエッジAIの普及に伴い、組み込み開発者はより厳しい要件に対応する必要がある。データセンター向けのAIシステムと比べ、エッジデバイスでは消費電力や性能、サイズなどの制約がより厳しくなるためだ。Rivera氏は例として、消費電力4W以下、サイズ100mm2以内という制約の下での動作が求められるバッテリー駆動の監視カメラなどを挙げていた。こうしたシステムにはリアルタイム処理も必要となる。
開発者が直面するもう1つの課題は、変化する標準とイノベーションへの対応だ。同氏は「AIのワークロードは急速に進化しているため、組み込み開発者がエッジAI環境での特定のユースケースに必要なものを選択できるよう、ハードウェアとソフトウェアは柔軟かつ俊敏である必要がある」と語っていた。
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