米国EE Timesの取材に応じたアナリストは「Intelが新CEOにLip-Bu Tan氏を登用したのは、苦境に立つ同社が再建を進める上で良い選択だ」としている。
米国EE Timesの取材に応じたアナリストは「Intelが新CEOにLip-Bu Tan氏を登用したのは、苦境に立つ同社が再建を進める上で良い選択だ」としている。
業界のベテランであるTan氏は、2024年8月にIntelの取締役を辞任したが、再び取締役会に参加することになった。暫定共同CEOであるDavid Zinsne氏とMichelle Holthaus氏の後任となる。Zinsne氏は引き続きエグゼクティブバイスプレジデント兼CFO(最高財務責任者)を、Holthaus氏は引き続きIntelの製品事業部門のCEOを、それぞれ務めるという。
Tan氏は、数多くの問題に直面している。2024年12月に、Intelの前CEOであるPat Gelsinger氏が退任した。米国トップの半導体メーカーである同社は長年にわたり、中核事業であるCPU分野でAMDに市場シェアを奪われ、スマートフォンやAIチップなどの新しい分野への参入にも失敗してきた。また同時に、収益性の悪いファウンドリー部門を独立事業として売却するための取り組みは、この先まだ何年もかかりそうだ。Intelのファウンドリー部門は現在も、業界のリーダーであるTSMCにプロセス技術で追い付こうとしている。
Tan氏は声明の中で「われわれには、より良いサービスを顧客に提供し、株主のために価値を創出する方法で事業を立て直す、大きなチャンスがある。Intelには、強力かつ差別化されたコンピューティングプラットフォームや膨大な顧客基盤の他、プロセス技術ロードマップを再構築することで日増しに強化されている堅ろうな製造拠点もある」と述べている。
Intelは2025年に「18A」プロセス技術を展開する予定で、TSMCの2nmプロセスに肩を並べることになりそうだ。それでも、Intelブランドのチップのみの製造から、幅広い顧客に向けた半導体チップを製造する方向へと焦点を切り替える必要がある。
TechAnalysisのアナリストであるJeff Koch氏は、EE Timesの取材の中で「Tan氏はIntelのファウンドリー部門を顧客第一の組織へと再構築するための『強力な選択』だといえる」と述べる。
「Tan氏が取締役を退任した理由が『動きの遅い官僚的組織に不満を感じたから』だったという点を踏まえると、同氏はスピードアップとスリム化を最優先する可能性がある。Intelの動きが遅く非効率的な中間管理職の、大幅な再編が期待される。近年は経営側の立場にあるが、技術的な知識もある。技術的視点から職務を担うだろう。これは、財務工学に焦点を当ててIntelに長期的な不利益をもたらした一部の前任者たちとは対照的だ」(Koch氏)
市場調査会社International Business Strategies(IBS)のCEOであるHandel Jones氏は、Tan氏と長年の知り合いだ。Jones氏はかつてCadenceのCEOを務めた経歴を持つTan氏について「Intelにとっては良い選択だ」と述べている。
Jones氏は「Intelにとって最優先すべきことの1つは、NVIDIAが独占するデータセンター向けAIアクセラレーター分野において、もっと競争力を高めることだ」と指摘する。
「Intelには、それを成し遂げられるアーキテクチャの専門知識があるが、24〜36カ月はかかるだろう。Intelは、Armプロセッサエコシステムに参加する必要があるかもしれない」(Jones氏)
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