メディア

Lip-Bu Tan新CEOは「Intelを再建する強力な選択」とアナリスト技術的視点の経営に期待(2/2 ページ)

» 2025年03月19日 11時30分 公開
[Alan PattersonEE Times]
前のページへ 1|2       

ファウンドリー部門は「米国の安全保障の鍵」

 アナリストによると、Tan氏は、Intelのファウンドリー部門を独立事業部門として分離するための取り組みを加速させるか、またはIntelの製品事業部門が唯一の主要顧客であるという苦境から救出する必要があるという。

 独立系アナリストであるNicolas Baratte氏は、EE Timesに提出したレポートの中で「Tan氏がCEOとして復帰したということは、ファウンドリー部門の分離または売却が加速するということを意味する。おそらく、Intelの製造計画を大幅に縮小し、TSMCへのアウトソーシングを増やすことにもなるだろう。TSMCを打ち負かすことができないなら、仲間になるしかない」と述べている。

 Intelは2025年2月に「引き続き一部の生産をTSMCにアウトソーシングすることで、製品のより迅速な市場投入を実現していく」と発表している。Baratte氏によると、Intelは生産量全体の約3分の1をTSMCに委託しているという。

 一方で「Intelのファウンドリー部門は、米国半導体業界を再生させる上で必要不可欠だ」とする声もある。

 SemiAnalysisは「Intelのファウンドリー部門は、高性能ロジックの研究開発/生産能力を備えた米国で唯一の組織であり、その生き残りは米国の国家/経済安全保障の重要な鍵となっている」と述べる。

 Jones氏は「Intelが分割された場合、株主や顧客はメリットを享受できるが、それには、ファウンドリー部門が収益を上げられるようにするために300億米ドルの資金援助を行う必要がある」と述べる。

 「Intelが生き残って高度な生産能力を確保することは米国にとって戦略的に重要なので、そのような資金は調達可能だろう」(Jones氏)

拡大するTSMC、停滞するIntel

 TSMCとIntelは、生産拡大計画において反対の方向に動いている。TSMCは2025年3月に、米国での半導体製造に1000億米ドルを追加投資することを確約した。一方Intelは、オハイオ州の新工場開設を2030年頃に遅らせる予定だという。

 TSMCは、AppleやNVIDIA、AMDなどの顧客向けに、最先端全体の90%超を製造している。Samsung ElectronicsやIntelなど、TSMCよりも規模が小さいライバル企業が米国での製造拡大を鈍化させているのに対し、TSMCは拡大の一途にある。Jones氏によれば、米国政府はTSMCに対し、Intelに支援を提供するよう圧力をかける可能性があるという。

 Jones氏は「米国政府は、競争力のある技術を持った米国メーカーを求めている。Intelが、支援なしにそこに到達することは難しいだろう。TSMCにとってIntelは、米国政府の圧力に対する安全弁になるのではないか。TSMCにとっては、ファブの生産能力を共有するよりもはるかに良いことだといえる」と述べている。

 2025年2月、TSMCはドナルド・トランプ米大統領の要請に応じてIntelのファウンドリー部門の経営権取得を検討していると報じられた。しかし、アナリストたちはその可能性は極めて低いと指摘している。

 Baratte氏は「Tan氏のIntel再編の取り組みは、同社を20年前の世界最大の半導体メーカーとしての地位に回復させ、会社をそのまま維持したいと考える内部関係者からの抵抗に直面するだろう。一方で、Tan氏らはIntelのファウンドリー部門がTSMCに追い付くには最大2000億米ドルを費やす必要があると理解している」と述べている。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.