onsemiが、高精度の長距離測定と高速移動物体の3Dイメージングを実現する産業向けiToFセンサーを開発し、ドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2025」において公開した。今回、onsemiが「既存のiToFセンサーの限界を克服した」とする同製品について、現地で担当者から話を聞いた。
onsemiは2025年3月11日(米国時間)、高精度の長距離測定と高速移動物体の3Dイメージングを実現する産業向けiToF(indirect Time of Flight)センサー「Hyperlux IDファミリー」を発表し、ドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2025」(同月11〜13日)において公開した。今回、onsemiが「既存のiToFセンサーの限界を克服した」とする同製品について、現地で担当者から話を聞いた。
onsemiが発表したHyperlux IDファミリーは1.2Mピクセルの1/3.2型グローバルシャッター搭載iToFセンサーで、同社としては初のiToFセンサーだという。
この開発には、かつて大手テック企業において、ジェスチャー操作などができるiToFセンサー搭載ハードウェアを開発した経験を持つ設計者らも携わっているといい、onsemiの産業および商業センシング部門のシニアマーケティングディレクターを務めるSteve Harris氏は「かれらはiToFセンサーがこれまで抱えていた多くの限界を理解していた。われわれは、そうした多くの課題に対応するため、このファミリーを一から構築した」と強調していた。
従来の課題としてHarris氏がまず挙げたのが、一般的なiToFセンサーでは動く物体の場合に正確な深度情報を取得することが難しかったという点だ。基本的にiToFセンサーは複数の垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)から放射された反射光の位相シフトを測定することで深度を検出するが「これらの反射された位相は、センサー側で処理と保存を行わない場合は、プロセッサに渡して深度計算を行う必要がある。しかし、それに要する時間を考えると、その組み合わせを行った時点で既に対象の物体が既に動いていることになる」(Harris氏)。こうした理由から高速移動物体のキャプチャーはこれまで不可能だったといい、例えばベルトコンベヤー上を流れる物体の測定の場合では、その都度ベルトコンベヤーを停止する必要があった。
そこでonsemiは今回、オンチップストレージとリアルタイム処理を備えた、グローバルシャッターアーキテクチャを採用。センサーはキャプチャーした位相信号を即座に内部のインピクセルメモリにストアし、位相情報取得に掛かる時間を大幅に削減。「シーン全体を瞬時にキャプチャーして深度測定の精度を向上できる」としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.