量子現象を利用することで従来のセンサーと比べて感度を飛躍的に向上する量子センサーは、電気自動車(EV)やGPS非対応のナビゲーション、医療用画像処理、通信など、さまざまな新しい用途を切り開いている。業界の専門家は、これを「第2の量子革命」と呼んでいる。
量子現象を利用することで従来のセンサーと比べて感度を飛躍的に向上する量子センサーは、電気自動車(EV)やGPS非対応のナビゲーション、医療用画像処理、通信など、さまざまな新しい用途を切り開いている。業界の専門家は、これを「第2の量子革命」と呼んでいる。
専門家らは「量子力学はコンピューティング領域で活用が期待される一方で、センシング業界に革命を起こす可能性も秘めている」と考えている。VTTフィンランド技術研究センターでマイクロエレクトロニクスおよび量子技術部門を率いるPekka Ikonen氏は「今こそ量子センサーの時代だ」と述べている。
同氏は「量子センサーは、原子や亜原子粒子スケールの量子力学現象を利用する。原子の基本的な特性を活用して環境の相対的な変化を検出することで、より高精度な測定を行える」と説明する。
量子状態の感度によってわずかな変化を検出できるため、これまでにないほどの高精度測定が可能になるということだ。量子センサーは従来のセンサーに比べて感度が優れているため、電流や電場、磁場、光、直線加速度、角加速度、時間など、さまざまな物理的特性の高感度測定を実現できる。
一般的な認識では、量子技術による革新はまだ遠い未来の話だとされている。しかし、現時点でも量子センサーは展開されている。英国の市場調査会社であるIDTechExのレポート「量子センサー市場2025-2045:技術/トレンド/プレーヤー/予測」では、有望な新しいユースケースに言及している。
その一例が、数百万チップ規模のトンネル磁気抵抗(TMR)センサーだ。既に自動車分野で遠隔電流検知向けに販売されている。また、光ポンピング磁力計(OPM)を使用した生体磁気イメージングは、まだ開発のかなり初期段階ではあるが、有望な可能性を示していて、Cerca Magneticsなどの新興企業が既に初期製品とプロトタイプを研究センターに販売している。
さらに、研究や国際時間基準に長年使用されてきた、ベンチトップサイズの原子時計もある。医療分野では、量子センサーは心臓の自然磁場の簡単な測定を行って、現在の心電図(ECG)装置よりもはるかに多くのデータを提供できる。ECG装置は皮膚に直接貼って電極を通して測定するが、量子センサーは衣服やマットレスなどに組み込むことができる。
量子センサーの感度の高さは、より多くの用途に適用できる可能性がある。GPSは干渉を受けやすいが、量子センサーは地球の不変の磁場を測定するので、外部からの影響を受けにくい。そのため、空中や道路、水中で超高精度のナビゲーションを提供できる。
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