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一次元構造のペロブスカイト結晶で大きな光起電力発生する電圧は従来の10倍以上

早稲田大学と東京大学、筑波大学による共同研究グループは、一次元らせん構造のハロゲン化鉛ペロブスカイト結晶で、15Vを超えるバルク光起電力を発現させることに成功した。発生する電圧は、太陽光照射下における既存のペロブスカイト太陽電池の10倍以上だという。

» 2025年03月11日 13時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

高感度円偏光センサーや高出力光起電力デバイスなどの開発に有用

 早稲田大学理工学術院の石井あゆみ准教授と東京大学生産技術研究所の石井和之教授、筑波大学数理物質系の二瓶雅之教授らによる共同研究グループは2025年3月、一次元らせん構造のハロゲン化鉛ペロブスカイト結晶で、15Vを超えるバルク光起電力を発現させることに成功したと発表した。発生する電圧は、太陽光照射下における既存のペロブスカイト太陽電池の10倍以上だという。

 空間反転対称性の破れと異方性を有する低次元構造の無機結晶では、特異的な物理現象が報告されている。特に、ハロゲン化鉛のような重原子を含む無機物質では、有機分子のキラル構造を活用すれば、一次元らせん構造の形成を促進できるという。

 このような無機化合物からなる一次元らせん鎖は、有機キラル分子を介して配列を制御すれば、「キラリティによる円偏光検出」や「極性によるバルク光起電力」「スピンの偏極による電流誘起磁性」などを示す可能性があるため、次世代半導体材料として注目されている。

 研究グループはこれまで、一次元らせん構造のペロブスカイト系薄膜デバイスを作製し、円偏光検出などの発現に成功してきた。また、一次元らせん型ハロゲン化鉛ペロブスカイトの結晶学的対称性をP21またはC2に下げれば、バルク光起電力の発現が期待できるという。

有機キラル分子を用いたヨウ化鉛の一次元らせん構造の形成メカニズム[クリックで拡大] 出所:早稲田大学他

 今回の実験では、結晶対称性の制御にフォーカス。熱的制御を用いた結晶化法によって、極性キラル空間群C2に属する一次元らせん構造のハロゲン化鉛ペロブスカイト結晶を得ることに成功した。そして、この結晶が15Vという大きな光起電力を示すことが分かった。

 開発したハロゲン化鉛ペロブスカイトの一次元らせん構造は、高感度の円偏光センサーや高出力の光起電力デバイス(太陽電池)、スピントロニクスデバイスなどの開発に極めて有用だという。

一次元らせんペロブスカイトの空間反転対称性の制御[クリックで拡大] 出所:早稲田大学他
一次元らせんペロブスカイト結晶の光電変換特性(電流電圧曲線)[クリックで拡大] 出所:早稲田大学他

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