前節と同様に、まず2025〜2035年における各種半導体のウエハー需要を積み上げ式のグラフで書いてみた(図8)。すると、2022年を基準とした予測(1)では成長率が低かったDRAMのウエハー需要が増大していることが判明した。
次に、各種半導体のウエハー需要を折れ線グラフで書いてみた(図9)。その結果、DRAMのウエハー需要の成長率が、2022年を基準とした(1)の予測時よりもかなり大きくなっていることが確認できた。また、成熟Logicと先端Logicも成長している一方で、NANDの成長率が非常に低いことが明らかになった。
そこで、2022年を基準とした予測(1)と、2024年を基準とした予測(2)における各種半導体のウエハー需要を比較してみた(図10)。その結果、特に大きな変化が見られたのはDRAMとNANDであることが分かった。
まず、DRAMは、予測(1)では毎年月産6万枚ずつ増加すると予測されていたが、予測(2)では毎年月産16万枚へと大幅に上方修正された。一方、NANDは、予測(1)では毎年月産10万枚の増加とされていたが、予測(2)では4万枚へと下方修正された。
また、DRAMやNANDほどの大きな変化ではないものの、予測(1)と予測(2)の比較では、成熟Logicが毎年月産38万枚から34万枚に減少し、先端Logicが毎年月産22万枚から24万枚へと増加することが分かった。
ここで、ウエハー需要において、予測(1)に対して、予測(2)で、DRAM需要が増加する一方でNAND需要が減少する理由を考えてみたい。
まず、DRAMのウエハー需要が増加する主な要因は、生成AIの開発・運用に不可欠なAIサーバおよびAIデータセンターの急速な普及にあると考えられる。
AIサーバには、NVIDIAのGPUをはじめとするAI半導体が使用されており、それらのGPUには多数のDRAMを積層したHBM(High Bandwidth Memory)が搭載されている。加えて、AIサーバの動作には高速DRAM(DDR5などの通常DRAM)も大量に使用される。これら二つの要因が、DRAMのウエハー需要を押し上げていると考えられる。
一方で、NANDのウエハー需要が減少する理由もAIサーバにあると推測できる。AIサーバでは、高速かつ高密度のSSDの需要が高まっており、それに対応するために高密度の3D NANDが必要とされる。この3D NANDは、2025年には積層数が400層を超え、2030年には1000層に到達すると予測されている。
しかし、こうした高積層の3D NANDを製造する際には、ウエハープロセスが非常に長くなる。そのため、生産キャパシティーが同じであっても、より高積層の3D NANDを製造する場合、ウエハーの投入量は必然的に減少することになる。それが、NANDのウエハー需要の減少につながっていると考えられる。
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