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2035年のウエハー需要を予測する 〜半導体も「VUCA時代」に湯之上隆のナノフォーカス(80)(3/5 ページ)

» 2025年04月08日 11時30分 公開

(2)2024年を基準としたウエハー需要予測(After ChatGPT)

 前節と同様に、まず2025〜2035年における各種半導体のウエハー需要を積み上げ式のグラフで書いてみた(図8)。すると、2022年を基準とした予測(1)では成長率が低かったDRAMのウエハー需要が増大していることが判明した。

図8 2025年〜2035年における各種半導体のウエハー需要予測((2)CMD2022)[クリックで拡大]

 次に、各種半導体のウエハー需要を折れ線グラフで書いてみた(図9)。その結果、DRAMのウエハー需要の成長率が、2022年を基準とした(1)の予測時よりもかなり大きくなっていることが確認できた。また、成熟Logicと先端Logicも成長している一方で、NANDの成長率が非常に低いことが明らかになった。

図9 2025年〜2035年における各種半導体のウエハ需要予測((2)CMD2024)[クリックで拡大] 出所:Amit Harchandani, “End markets, wafer demand and lithography spending”, “ASML Investor Day”(2024年11月14日)のデータを基に筆者作成

 そこで、2022年を基準とした予測(1)と、2024年を基準とした予測(2)における各種半導体のウエハー需要を比較してみた(図10)。その結果、特に大きな変化が見られたのはDRAMとNANDであることが分かった。

図10 2025〜2035年にかけての各種半導体のウエハー需要:(1)CMD2022と(2)CMD2024の比較[クリックで拡大] 出所:Amit Harchandani, “End markets, wafer demand and lithography spending”, “ASML Investor Day”(2024年11月14日)のデータを基に筆者作成

 まず、DRAMは、予測(1)では毎年月産6万枚ずつ増加すると予測されていたが、予測(2)では毎年月産16万枚へと大幅に上方修正された。一方、NANDは、予測(1)では毎年月産10万枚の増加とされていたが、予測(2)では4万枚へと下方修正された。

 また、DRAMやNANDほどの大きな変化ではないものの、予測(1)と予測(2)の比較では、成熟Logicが毎年月産38万枚から34万枚に減少し、先端Logicが毎年月産22万枚から24万枚へと増加することが分かった。

なぜDRAM需要が増え、NAND需要が減るのか

 ここで、ウエハー需要において、予測(1)に対して、予測(2)で、DRAM需要が増加する一方でNAND需要が減少する理由を考えてみたい。

 まず、DRAMのウエハー需要が増加する主な要因は、生成AIの開発・運用に不可欠なAIサーバおよびAIデータセンターの急速な普及にあると考えられる。

 AIサーバには、NVIDIAのGPUをはじめとするAI半導体が使用されており、それらのGPUには多数のDRAMを積層したHBM(High Bandwidth Memory)が搭載されている。加えて、AIサーバの動作には高速DRAM(DDR5などの通常DRAM)も大量に使用される。これら二つの要因が、DRAMのウエハー需要を押し上げていると考えられる。

 一方で、NANDのウエハー需要が減少する理由もAIサーバにあると推測できる。AIサーバでは、高速かつ高密度のSSDの需要が高まっており、それに対応するために高密度の3D NANDが必要とされる。この3D NANDは、2025年には積層数が400層を超え、2030年には1000層に到達すると予測されている。

 しかし、こうした高積層の3D NANDを製造する際には、ウエハープロセスが非常に長くなる。そのため、生産キャパシティーが同じであっても、より高積層の3D NANDを製造する場合、ウエハーの投入量は必然的に減少することになる。それが、NANDのウエハー需要の減少につながっていると考えられる。

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