パワー半導体のスイッチング損失を自動低減する駆動IC 対応品種が1万超に : SiCにも対応可能 (2/2 ページ)
開発したチップのサイズは2.5×2.0mmと小型で、低コストだと高宮氏は述べる。必要な機能/回路を1チップに搭載しているので、従来のゲート駆動ICをそのまま置き換えられる。追加の回路設計は外付けの部品は不要だ。
さらに、パワー半導体の負荷電流や動作温度が変化しても、ゲート駆動電流のタイミングを自動的に調整するので、スイッチング損失を常に低減できることも特徴だ。
研究グループは、定格電圧1200V/定格電流100AのIGBTを用いて、実証実験を行った。出力が600V、負荷電流は20A/50A/80A、温度が25℃/75℃/125℃の組み合わせ(全部で9条件)で実測した結果、全ての条件において、従来のゲート駆動方式に比べスイッチング損失を自動で低減した。損失の低減率は16〜30%だった。
今回発表した技術はIGBTやシリコンパワーMOSFETだけでなく、炭化ケイ素(SiC)パワーMOSFETなどさまざまなパワー半導体にも対応している。高宮氏は「幅広い用途での活用が期待できる」と語る。
今後は、センサー回路の改善や、それを搭載したゲート駆動ICの開発をさらに進める他、パワー半導体を手掛けるメーカーへの提案も行っていくという。
今回の成果は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)で実施している「省エネエレクトロニクスの製造基盤強化に向けた技術開発事業」によるものである。
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