カシオは軽薄短小化と並行して、高機能化に向けても開発を進めた。カシオ初の関数電卓「fx-1」(1972年発売、1万2800円)やパーソナル関数電卓「fx-10」(1974年発売、2万4800円)だ。従来のような四則演算にとどまらず、三角関数などの複雑な計算ができる。現在、関数電卓は学校教育向けの需要が大きいが、fx-1はコーディングやビット計算を行うエンジニア向けに開発したものだったという。
その後、学生向けにはグラフ関数電卓「fx-7000G」(1985年発売、1万9800円)が登場した。ディスプレイが大きく、関数グラフや統計グラフが表示できる。
こうした高機能電卓が多く発売されると、カシオは「『これからは電卓を通じてどのような価値を提供できるのか』という段階になった」(佐藤氏)という。そして「所有する喜び」を提供する電卓として、カシオ最高峰のプレミアム電卓「S100」(2015年発売、3万8500円)が登場した。切削アルミニウムボディーやキーのタッチ感にこだわっていて、佐藤氏は「カシオが電卓で培った技術を全て詰め込んだ豪華な電卓で、値は張るが使うとやめられない」と強調した。
さらには使い心地を追求した電卓として、操作面を横方向に3度傾けて入力しやすくした人間工学電卓「JE-12D」(2022年発売、1万1550円)も開発。3度という数値は電卓を操作する手の動きのデータを解析して得たものだという。
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