今回、ソニーグループ社長の十時裕樹氏は、中長期的な視点でのグループの事業と戦略的な方向性を説明した。
I&SS分野に関しては、主力領域であるモバイル機器向けイメージセンサー事業でセンサーサイズの大判化トレンドが今後も数年にわたり継続すると予測している。また解像度、ノイズ性能、ダイナミックレンジ、消費電力などのイメージセンサーの性能進化に対するニーズも引き続き高く、十時氏は「こうした革新的なセンサーの製造に対応するために、新たな世代の製造プロセスを導入していく」と説明。2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサーなどと、より微細な次世代プロセスを組み合わせることで、「より付加価値の高い、差異化されたセンサーを継続して提供し、顧客の期待に応えていく」とした。
十時氏はまた、新プロセス導入に向けた投資について「主にモバイル機器向けイメージセンサーに使われるものになる。この投資は現中期経営計画(2024〜2026年度)ではなく、次期とさらにその次、2030年に向けて段階的に発生していくイメージだ」と説明。投資の規模については「前中計(イメージセンサー投資額は約9300億円だった)の規模感に近いものになるかもしれない」としつつ「熊本で新工場をどの辺から稼働させるかという問題とも絡んでくるが、当社としてはいたずらに投資を先行させたいとは思っていない。需要を見極めながら最適な形で、段階的にその投資を組み込んでいきたい」と語った。
さらに「必要な投資をいかに適切なレベルに抑制し、投資効率を引き上げていくかは大きなチャレンジであり、今後さまざまな選択肢を検討していく」とも言及。「少し長い時間軸でセンサーの進化を考えるとき、やはり製造プロセスに対して投資が必要になるが、その投資をどういう形で実行していくかは重要なテーマだ。100%自前でやるのか、投資のパートナーを招くのか、もしくはファブライトのような戦略を取っていくのか、複数の選択肢がある。それをどういうタイミングで、どういう形で実行していくかは常に検討のテーブルに載っている」など述べ、全体の市場の拡大や必要な投資、同社のケイパビリティ、市場へのポジショニングなどを踏まえつつ、最適な戦略を考えていくとした。
モバイル機器向けセンサー以外については、カメラや産業機器、社会インフラ向けセンサーなどで安定した収益を継続。車載向けセンサーなど将来の成長が期待される事業については、「市場成長のスピードや事業性をよく見極めながら、最適な開発費や体制の下での中長期的な事業成長を目指す」とした。
なお、ソニーの半導体事業については2025年4月、Bloombergが「ソニーが子会社のソニーセミコンダクタソリューションズの株式上場を前提としたスピンオフを検討していることが分かった」と関係者の話として報じていた。
今回、記者説明会では「金融以外の事業部門でスピンオフなどは検討しているか」との質問が挙がったが、十時氏は「スピンオフというのは方法論で、何を実際にやりたいかというのが重要だ。当社として考えなければならないのは、ソニー全体とそれぞれの事業がどういう形を取れば最も成長していけるのかで、金融についてはその解決策としてスピンオフという選択をした。他の事業について現時点で計画していることはない。引き続き、必要があればそうした施策も検討の選択肢としては考えていくことになるだろう」と述べていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.