信頼性/強度を高めたパワー半導体向け放熱材料 新技術に注力する太陽HD : 既に採用例も (2/2 ページ)
InnoValleyで開発された初の新製品として2025年2月に発表したのが、次世代放熱ペースト材料「HSP-10 HC3W」だ。太陽HDが今後強化を目指す領域である非ソルダーレジスト製品の1つで、PCBから熱を逃がすためのTIM材(Thermal Interface Material)として、パワー半導体の熱設計のニーズに応えることを目指す。
「HSP-10 HC3W」開発背景[クリックで拡大] 出所:太陽ホールディングス
従来のTIM材は、パワー半導体とヒートシンクの間に塗布するものだったが、基板に熱がこもるという課題があった。HSP-10 HC3Wは、基板とヒートシンクの間に塗工することでより放熱性を高めるものだ。この構造ではTIM材に高い絶縁性も求められるが、HSP-10 HC3Wは高電圧環境にも対応している。
左=放熱性を高める構造に変更、右=高い絶縁信頼性[クリックで拡大] 出所:太陽ホールディングス
信頼性と機械強度の高さも特徴だ。TIM材には高温環境での長期間使用に耐える信頼性が求められるが、従来のTIM材は熱可塑性樹脂なので使用する中で劣化が進行し、放熱性が低下するという問題があった。一方、HSP-10 HC3Wは熱硬化性樹脂で、ガラス転移点が180℃以上と高いので、高温環境で使用しても特性を維持できる。−40℃/+165℃のサーマルサイクルテストを1000サイクル繰り返しても割れや剥がれが発生せず、各種特性を維持できることを確認したという。
TIM材はフィラーが多く含まれることで表面が粗くなり、ヒートシンクとの接触面積が減少してしまうので、機械強度も課題だ。HSP-10 HC3Wは溶剤を含まないことで表面を滑らかにし、強度を高めている。
左=高温環境に対応、右=滑らかな表面を形成[クリックで拡大] 出所:太陽ホールディングス
HSP-10 HC3Wは、2026年1月から量産開始を予定している。既に大手自動車部品メーカーの車載チャージャーコンバーターに採用が決まっているという。
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