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「NVIDIAと真逆の取り組みをしよう」 Jim Keller氏Tenstorrent CEO(2/4 ページ)

» 2025年06月10日 15時30分 公開
[Sally Ward-FoxtonEE Times]

RISC-Vへの投資

 またTenstorrentのシリコンおよびIPは、オープンソース命令セットRISC-Vをベースとして構築されている。Keller氏は、「RISC-V業界の意思決定のペースにはうんざりしていたが、われわれは今や、いくつかの分野において先導役を担っている」と述べる。

 「われわれは、RISC-Vコンパイラ技術に投資している。LLVMの性能を10%向上させ、オープンソースに貢献した。OSやドライバー、ツールチェーンなど、全てが向上している。RISC-Vは実に素晴らしく、われわれが優れた意思決定を行い、そこから利益を得られるようになることをとてもうれしく思う」(Keller氏)

 「AIコード生成は、コードを変化させようとしている。並列的な方法へと大きく進み、CPUアーキテクチャも変わりつつある。他のISAではこうした状況をコントロールすることができないが、RISC-Vにはそれが可能であるため、われわれは積極的に取り組んでいるのだ」(Keller氏)

Jim Keller氏 出所:Tenstorrent

NVIDIAの動き「全く気にしていない」

 NVIDIAは最近、カスタムCPUやアクセラレーターを製造しているメーカーを選定し、GPU間の通信を行うインターコネクト技術「NVIDIA NVLink」のIPをライセンス供与することを発表した。同社は独自開発で有名だが、それを「一部のNVIDIA技術を取り巻くマルチベンダーエコシステムの構築に向けた動きである」とする見方もある。Keller氏は「よりオープン性の高いバージョンのNVLinkに対する懸念はあるか」とする問いに対し、「全く気にしていない」と答えている。

 同氏は「『それに関してはどう対応しているのか』という質問を受けるが、その答えは文字通り『何もしてない』となる。なぜ私が心配する必要があるのだろうか。全く必要ない技術であるため、関心もない。良いアイデアだとは思えないし、開発もしていない」と述べる。

 「Tenstorrent製チップは、実績あるオープンスタンダードのイーサネットで接続されており、それで十分過ぎるほどだ」(Keller氏)

 同氏は冗談交じりに「NVIDIAが実行していることのリストを作り、われわれはその反対のことをしよう。イーサネットは実に素晴らしい。小型かつ低コストのチップは優れたアイデアだ。よりシンプルなサーバや、オープンソースソフトウェアも素晴らしい」と述べている。

 また同氏は、Tenstorrentがより安価なチップパッケージングに注力していることも強調した。広帯域メモリ(HBM)は避け、GDDR6を採用しているという。

 「リーダー企業を正確にコピーすれば、市場シェアの20%は獲得できるだろう。しかし、価格は引き下げられ、新しい市場を生み出すことはできない」(Keller氏)

 同氏は「少なくとも1社の企業が、Tenstorrentのオープンソーススタックを自社のAIハードウェアで使用している。中国に拠点を置くその企業が、バグレポートを提出し、Tenstorrentのチームは何の問題もなく修正した。たとえこれが中国の競合メーカーを支援する可能性があるとしても、それがオープンソースソフトウェアの本質である」と述べる。

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