香川大学と兵庫県立大学は、有機半導体と太鼓型分子を連結させた新しい有機半導体を開発した。この連結分子は、酸化還元に対し優れた安定性を示すことが分かった。不揮発性メモリに応用すれば、素子構造の簡素化が可能となる。
香川大学創造工学部の田原佳志朗准教授と兵庫県立大学大学院理学研究科の阿部正明教授らによる研究グループは2025年6月、有機半導体と太鼓型分子を連結させた新しい有機半導体を開発したと発表した。この連結分子は、酸化還元に対し優れた安定性を示すことが分かった。不揮発性メモリに応用すれば、素子構造の簡素化が可能となる。
有機化学と無機化学の融合領域である有機金属化学において、代表的な分子である「フェロセン」は、太鼓型の特徴的な構造を持つ分子で、電子を安定に出し入れ(酸化還元)することができる。一方、分子性有機半導体の「ベンゾチエノベンゾチオフェン(BTBT)」は、フレキシブル素子に向けた材料として注目されている。
研究グループはこれまで、フェロセン誘導体をゲート絶縁膜のコーティング剤に、BTBT誘導体を有機半導体層として用い、有機トランジスタに不揮発性メモリ機能を持たせることに成功してきた。今回は、これら2つの部材を1つにまとめ、素子構造を簡素化できる有機半導体の開発に取り組んだ。
実験では、フェロセンとBTBTを共有結合によって連結させた新規分子を化学合成した。この連結分子は、安定して酸化還元できることを確認した。さらに、酸化された状態を詳細に評価し、近赤外領域に特徴的な吸収があることを確認した。これにより、フェロセン部位とBTBT部位が電子的に相互作用することが分かった。また、結晶状態ではフェロセン部位同士、BTBT部位同士が接触する凝集形態に加え、フェロセン部位とBTBT部位が接触する新たな凝集形態を含むことが判明した。
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