中央大学は「国際宇宙産業展」に出展し、低機能の小型ロボット群をAI(人工知能)によって高度知能化する技術を展示した。月面での探査や拠点構築に生かすことを目指すものだ。
中央大学は「国際宇宙産業展」(2024年2月20〜22日、東京ビッグサイト)に出展し、低機能の小型ロボット群を集団共有型のAI(人工知能)によって高度知能化する技術を展示した。月面での探査や拠点構築に生かすことを目指すものだ。
この技術は、内閣府の研究開発推進事業「ムーンショット型研究開発事業」の枠組みのもとで、中央大学 理工学部 教授の國井康晴氏が中心となって研究を進めている。研究には中央大学の他に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、産業技術総合研究所、兵庫県立大学、東京農工大学、竹中工務店、デジタル・スパイスが参加している。
地球からの観測や月周回衛星「かぐや」の調査によって、月面には大きな縦穴があることが分かっていて、その中には溶岩洞窟のようなトンネル状の空間が広がっていると推定されている。トンネル内は表面温度が安定しているほか、太陽光や放射線、隕石などの影響を受けにくく、活動拠点や住居を構築するにはメリットが大きい場所だと考えられる。
中央大学らの研究チームは、このトンネル内の探査のためにロボット技術の研究を行っている。将来的には専用のコンテナを縦穴から落として運搬し、人の生活拠点を設置することも目指すという。
小型のロボットはもともと竹中工務店が中心となり、建設現場での使用に向けて開発していた。人が立ち入れない天井裏や狭い免震層なども含め、日々の変化が激しい建設現場を点検できるよう、小回りの利く小型設計になっている。「状況が分からない場所での点検に適用できる」という点から、月面探査にも有効だとして研究を始めたという。
このロボット自体には機能を多く盛り込んでいない。できることは二輪で走行し、ジャンプするのみだ。トンネル内は地球から観測できずリスク想定が難しいことから、大型の高機能ロボットによる探査には限界がある。そのため、あえて機能を減らし、故障しにくくしているという。竹中工務店の担当者は「冗長化するといってもどんな機能がどれほど必要か決められない。そのため機能は単純にして故障しにくくし、代わりにロボットの数を増やすことでトラブルに対応できるようにした」と説明する。
低機能のロボット群には集団共有型のAIを分散実装し、集団として高知能化する。地形を把握/推定したり、一斉に行動するか個別に行動するかといった戦略を立てたりすることが可能だという。
研究チームは今後、ロボット群の行動の知的戦略化手法の検討、AIの仕様設計とアルゴリズムの検討などを行い、2030年には溶岩トンネル内の探査や活動拠点の運搬を行える技術の確立と実証を目指すとしている。外部から支援を得られない環境でロボット群を組織化し、進化しながら長期間活動するための技術は、地球上での災害支援などにも役立てられる見込みだという。
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