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メタマテリアル熱電変換で密閉空間内の物体を冷却パッケージ内の熱を回収・排出

東京農工大学と理化学研究所は、メタマテリアル熱電変換により、密閉空間内にある物体を冷却する「非放射冷却」を実現した。電子デバイスのパッケージ内にこもる熱を回収・排出することが可能となる。

» 2024年03月14日 15時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

水冷や空冷技術と組み合わせ、電子デバイスを効率よく冷却

 東京農工大学と理化学研究所は2024年2月、メタマテリアル熱電変換により、密閉空間内にある物体を冷却する「非放射冷却」を実現したと発表した。電子デバイスのパッケージ内にこもる熱を回収、排出することが可能になる。従来の水冷や空冷技術と組み合わせ、電子デバイスを効率よく冷却することができるという。

 電子デバイスは、仕様で保証された温度範囲を超えると動作が不安定になり、誤動作や故障の原因となる。特に半導体素子は、大規模/高集積化が進み、パッケージ内にこもる熱量が増えている。このため、効率よく冷却する技術が極めて重要となる。

 新たに開発した熱エネルギーを回収するメタマテリアルと熱電変換を組み合わせた非放射冷却機構は、密閉空間内部の冷却を可能にする技術である。熱伝導や熱放射(熱輻射)によって熱を逃がす従来手法とは異なり、密閉容器内部の熱エネルギーを電気エネルギーとして外部に排出することで物体を冷却する。この技術を既存の水冷・空冷技術と併用すれば、より効果的な冷却が可能になるという。

 研究グループは今回、吸収体に囲われた密閉容器を用意し、非放射冷却が実験的に可能であることを実証した。密閉容器内には、50℃の熱輻射を吸収するように設計されたメタマテリアル熱電変換素子を取り付け、容器内部の温度推移を計測した。

 この結果、一定時間後に測定した容器の温度低下は、メタマテリアル熱電変換素子を含む容器の方が、メタマテリアルが装着されていない比較熱電変換素子を含む比較容器に比べ、大きいことを確認した。

メタマテリアルを形成した電極を装着したメタマテリアル熱電変換素子の概略図 左上がメタマテリアルを形成した電極を装着したメタマテリアル熱電変換素子の概略図。右上は吸収体に囲われた密閉容器の概略図。左下は今回用いたメタマテリアルの電子顕微鏡図。右下は今回用いたメタマテリアルの吸収スペクトル(赤線)と、メタマテリアルが吸収した50℃の熱輻射スペクトル(青線)との比較[クリックで拡大] 出所:東京農工大学他
メタマテリアル電極を装着した熱電変換素子を含むメタマテリアル容器および、比較電極を装着した熱電変換素子を含む比較容器の温度推移を比較 メタマテリアル電極を装着した熱電変換素子を含むメタマテリアル容器および、比較電極を装着した熱電変換素子を含む比較容器の温度推移を比較 [クリックで拡大] 出所:東京農工大学他

 今回用いたメタマテリアルアレイの体積は、密閉容器の体積と比べ約1万分の1と極めて小さい。メタマテリアルの数を増やせば、多くの熱輻射エネルギーを吸収でき、より大きな冷却効果につながるとみている。

 今回の研究成果は、東京農工大学大学院工学研究院の久保若奈教授、工学府電気電子工学専攻博士前期課程の川村直矢氏、理化学研究所光量子工学研究センターフォトン操作機能研究チームの田中拓男チームリーダー(同開拓研究本部田中メタマテリアル研究室主任研究員)らによるものである。

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