同一液中で異なる結晶型酸化チタン種を連続積層:次世代太陽電池応用に期待
岐阜大学は、1つのチタン原料溶液を用いながら、反応温度を変えることで異なる酸化チタン結晶種を選択的に作り分ける手法を開発した。この手法を用いて、異なる結晶型酸化チタン種を原子レベルで連続積層することにも成功した。
岐阜大学工学部の萬関一広准教授らは2025年8月、1つのチタン原料溶液を用いながら、反応温度を変えることで異なる酸化チタン結晶種を選択的に作り分ける手法を開発した。この手法を用いて、異なる結晶型酸化チタン種を原子レベルで連続積層することにも成功した。
酸化チタン(TiO2)は、白色顔料や光触媒として知られ、ペロブスカイト太陽電池の構成材料などに用いられる。ルチル型やアナターゼ型など複数の結晶構造を有する酸化チタンを結晶化するためには、一般的に100℃以上の高温・高圧の水熱合成法や、約500℃での熱処理が行われてきた。
今回の研究では、塩化物イオンが結合したチタンオキソクラスターを、水溶液中で重縮合させるために必要な条件のなかで、反応温度を変えてみた。そして、反応開始から24時間経過するまでに酸化チタンがどのように結晶成長するかを調べた。
酸化チタンの低温合成と成膜に関する概念 [クリックで拡大]出所:岐阜大学
この結果、例えば70℃では平均粒径が4nmのアナターゼ型酸化チタンが生成されるのを確認した。これに対し、60℃では平均粒径が9nmのルチル型酸化チタンが生成された。これにより、同じチタン原料溶液を用い80℃以下の反応温度で制御した場合、ルチル型とアナターゼ型の酸化チタンを、わずか10℃という温度差で選択合成できることを実証した。
さらに、同一溶液を利用して、ルチル/アナターゼ酸化チタンの積層膜を作製することにも成功した。1層目の反応温度を60℃に、2層目の反応温度を70〜80℃にそれぞれ制御することによって、2段階連続成膜を実現した。
この試料を電子顕微鏡やX線回析パターンを使って解析したところ、60℃の低温領域では、ブルッカイト酸化チタンが、ルチル層と共存する形でわずかに析出されていることを確認した。また、ルチル/アナターゼ酸化チタン複合層の膜厚を100〜150nmに制御する技術も確立できたという。
合成した酸化チタン粉末のX線回析パターンとラマンスペクトル[クリックで拡大] 出所:岐阜大学
化学溶液析出の温度プロファイル[クリックで拡大] 出所:岐阜大学
ルチル/アナターゼ酸化チタンジャンクション形成の模式図[クリックで拡大] 出所:岐阜大学
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