三菱電機と東京科学大学は、可視光を吸収するポリマー状の窒化炭素(PCN)を固定化した光触媒パネルを用い、CO2からギ酸を生成することに成功した。ギ酸の大量生成を可能にすることで、再生可能エネルギーの利用拡大に貢献していく。
三菱電機と東京科学大学理学院化学系の前田和彦教授らは2025年7月、可視光を吸収するポリマー状の窒化炭素(PCN)を固定化した光触媒パネルを用い、CO2からギ酸を生成することに成功したと発表した。ギ酸の大量生成を可能にすることで、再生可能エネルギーの利用拡大に貢献する。
光触媒を用い太陽光エネルギーを化学物質に変える人工光合成は、カーボンニュートラル社会を実現する有効な手段となる。人工光合成によって得られる物質の中でも、ギ酸は液体で貯蔵や運搬が容易なことから、再生可能エネルギーの1つとして注目されている。こうした中で、可視光域を効率よく利用できる人工光合成技術や、ギ酸を大量生成する技術などを確立していく必要があった。
そこで今回、人工光触媒を固定化する技術を新たに開発した。これによってギ酸の回収が容易になり回収コストを削減できるという。人工光合成触媒系は今回、3種類の化合物で構成した。1つ目は可視光を吸収し励起状態となった電子を生じさせる「PCN微粉末」、2つ目は励起状態の電子をPCNから受け取り、CO2からギ酸へと還元する「ルテニウム錯体(RuP)」である。
これまでは、RuPをPCN微粉末に吸着させ、反応溶液中に分散させることで人工光合成触媒系を構築していた。これに可視光を照射することで反応溶液中に溶解したCO2から、ギ酸を合成していた。ただ、ギ酸を大量合成するには光触媒を平面上に形成し、固定化する必要があった。
これを実現するため、3つ目の化合物として「酸化チタン」を採用した。ホウケイ酸ガラス平板上にPCN微粉末を固定化する土台として酸化チタン層を設けた。この上にPCN層の混濁液を塗布して多層化した。各層は電気炉を用い、適切な温度管理を行ったうえで加熱し、人工光触媒の固定化に成功した。
人工光触媒の固定化によって、ギ酸の回収工程が容易となった。従来手法では反応溶液中のギ酸を取り出すため、RuP/PCN微粉末をろ過する作業が必要であった。これを固定化したことで、ろ過する作業が不要となった。大量生成する場合、回収コストの削減にもつながるという。
照射した光をギ酸に変える効率は2%であった。この値はPCNを反応液中に分散した場合と同等である。さらに、この触媒を用いると、ギ酸の他に水素やCOも生成されるが、全体の生成物に占めるギ酸の割合は85%であることも確認した。
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