図5はIntelの主力製品「CORE」シリーズの2015年から2020年の様子である。同時期、Intelは第2第3の成長軸を模索し、FPGAのAlteraやVision ProcessorのMovidius、先進運転支援システム(ADAS)用チップのMobileyeなどを次々と買収した。一方で、コアコンピタンスであるCOREシリーズは約6年間、TMSCやSamsung Electronicsが2年ペースで微細化を進める中、14nmという2014年にCORE-Mで適用し始めた同じ製造プロセスを改良し使い続け、CPUアーキテクチャも“チョイ変”でほとんど停滞したままであった。その分、買収した企業が成長していればつじつまは合うが、自身のコア事業を成長させるためのMediaTekらのM&Aとは異なり、Intelの場合は本業とはあまり関係のない買収を行っており、CHIPSET化やシステム強化にはつながらないものであった。結果としてIntelは買収した事業のうち、いくつかを手放している。システム力を上げる買収とそうでない買収はまったく別物というわけだ。
図6は2020年代前半のIntelの様子である。2024年からは複数のシリコンを組み合わせるCHIPLETを活用した「CORE Ultra」に主軸を移しているが、2023年まではモノリシックシリコンにPコア、Eコアを組み合わせてIntel 10nm世代(INTEL7)で製造するという、久々の変更を行っている。とはいえ、大きな変更とは言えず当時誰もが想定した範囲の変更にとどまっており、その後も微修正の繰り返しだけになっている。
恐らくだが、何か新しいチャレンジをするよりも、微修正の方が失敗のリスクは少ないという、“JTC(Japanese Traditional Company)病”がIntelにもはびこっていたのではないだろうか。新CEOの元、大胆な変革をIntelは進めているが、目に見える効果を出すには数年単位の時間が必要だと思われる。昔の日本は米国に10年遅れているとよく言われたが、今は逆も多い。日本の家電メーカーの失敗をIntelやSamsungが10年遅れでトレースしているような状況も見えているからだ。
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