前工程装置の中で244億米ドルと最大規模となった露光装置市場の企業別シェアを図5に示す。1995年時点では、ニコンが48.9%、キヤノンが28.7%、ASMLが15.9%であり、日本勢が合計77.6%を占めていた。
しかし、その後ニコンとキヤノンのシェアは急速に低下し、ASMLのシェアが急拡大した。ASMLのシェアは2006年に60%を突破し、2010年には80%を超え、2021年には95%に到達した。その後もおおむね95%前後の高水準を維持し、2024年時点ではASMLが94.1%、ニコンが2.5%、キヤノンが3.4%と、日本メーカーのシェアはごくわずかにとどまっている。
ここまでは出荷金額ベースのシェアを見てきたが、次に出荷台数とその企業別シェアを見てみよう(図6)。露光装置の年間出荷台数は、2017年頃まではほぼ300台前後で推移していたが、その後増加傾向に転じ、2023年に681台、2024年も682台と、2010年代前半の2倍以上に達している。
そして、出荷台数シェアを見ると、ASMLは一貫して60%強でほぼ安定している。一方、2011年に23.7%だったニコンは、その後急減し、2024年には4.7%まで低下した。それとは対照的に、2011年に14.5%だったキヤノンは着実にシェアを伸ばし、2024年には32.7%に達している。
このように、出荷台数ベースではニコンが低迷する一方、キヤノンはASMLの半分強に相当するシェアを獲得している。
それでは、キヤノンはどの種類の露光装置で健闘しているのだろうか。
図7に、2023年および2024年における各種露光装置の企業別出荷台数を示す。
まず、最先端露光装置である、1台約308億円の極端紫外線(EUV)露光装置は、ASMLのみが供給しており、2023年に53台、2024年に44台を出荷した。なお、各種露光装置の価格はASMLの出荷台数および出荷金額から算出し、その際の為替は1ユーロ=164円とした。
以上のように、機種別に見ると、EUVおよびArF液浸・ドライではASMLが圧倒的優位を維持しているが、KrFではASMLの減少が目立ち、i線ではキヤノンが大きな存在感を示している。
それでは次に、各種露光装置における企業別出荷台数シェアを確認する。
図8に、2023年および2024年における各種露光装置の出荷台数シェアを示す。
EUVについては、ASMLのみが製造可能であるため、2023年および2024年ともにASMLのシェアは100%である。
ArF液浸では、2023年にASMLが93.3%、ニコンが6.7%。2024年にはASMLが97.0%、ニコンが3.0%となり、ASMLが圧倒的優位を維持している。
ArFドライでは、2023年にASMLが76.2%、ニコンが23.8%で、2024年にはASMLが80.6%、ニコンが19.4%となり、ArF液浸に比べればニコンが一定の存在感を示している。
KrFでは、2023年にASMLが76.0%、ニコンが0.8%、キヤノンが23.1%であったが。2024年にはASMLが70.5%に微減し、ニコンが1.6%、キヤノンが27.9%とやや増加した。
i線では、2023年にASMLが26.2%、ニコンが11.4%、キヤノンが62.4%と、キヤノンが他社を大きく引き離している。さらに、2024年にはASMLが18.0%、ニコンが7.4%と両者が減少する一方、キヤノンは74.6%までシェアを拡大した。
以上の結果を踏まえ、図7および図8から見えてくる各社の戦略を以下に整理する。
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