村田製作所は「CEATEC 2025」に出展し、マスクに装着して使用する音声入力デバイスを紹介した。圧電センサーを用いてマスクの振動から音声を検出するもので、周囲の騒音を拾わないので、製造現場での音声入力などに利用できる。
村田製作所は「CEATEC 2025」(2025年10月14〜17日、幕張メッセ)に出展し、マスクに装着して使用する音声入力デバイスや、高感度のにおいセンサーを紹介した。
「mask voice clip」は、村田製作所が開発している音声入力デバイスだ。村田製作所の圧電フィルムセンサー「Picoleaf」を用いたクリップ型のデバイスで、マスクに装着して用いる。圧電センサーが発話によるマスク表面の微小な振動から音声を検出するので、周囲の人の声や騒音が影響しない。また、小声でも音声を検出できる。
昨今、大規模言語モデル(LLM)や生成AIに関連する技術が発展していることから、村田製作所は「近い将来、自然言語によってデバイス操作や入力業務を行うようになる」と予測しているという。しかし、一般的なマイクでは周囲の人の声や環境音を拾ってしまい、話者の声を検出しにくいことがある。mask voice clipはそうした課題に対応するデバイスだ。従来、騒音環境下で音声入力を行おうとすると、ソフトウェアによる話者特定や音声抽出が必要だったが、mask voice clipはハードウェア自体で音声を切り分けられるので、複雑なソフトウェアを用いずに高精度な入力が実現する。
ブースでは、mask voice clipと一般的なピンマイクの比較デモを行った。村田製作所の説明員がデバイスとピンマイクを装着して技術の説明などを行い、その近くで騒音の再現として天気予報の音声を再生していた。mask voice clipとピンマイクそれぞれの音声の文字起こしを見てみると、ピンマイクのほうは天気予報の音声を拾ってしまっていたのに対し、mask voice clipは説明内容を正確に抽出できていた。
用途としては、多数の装置が稼働する製造現場での音声入力による機器操作や、プライバシーへの配慮から大きな声を出せない医療現場での入力業務などを想定している。今後はマスクを使わずに同様の音声抽出ができるよう、開発を進めているという。
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