信越化学工業は、300mm GaN専用の成長基板である「QST基板」を用い、imecが5μm厚のGaN HEMT構造を作製し、650Vを超える高耐圧を達成した。「SEMI規格に準拠した300mm基板としては世界最高の破壊電圧」(同社)だという。
信越化学工業は2025年11月、300mm 窒化ガリウム(GaN)専用の成長基板である「QST基板」を用い、imecが5μm厚のGaN HEMT構造を作製し、650Vを超える高耐圧を達成したと発表した。「SEMI規格に準拠した300mm基板としては世界最高の破壊電圧」(同社)だという。
QST基板は米国Qromisが開発したGaN成長専用の複合材料基板だ。信越化学は2019年にQromisからライセンスを取得し、直径が150mmと200mmのQST基板および、さまざまな基板サイズのGaN on QSTエピタキシャル基板を製造してきた。2024年9月にはQromisと連携し、300mm QST基板のサンプル出荷を始めた。
さらに両社はimecとの協力関係に基づき、imecの最先端300mm CMOSファブ向けに300mm QST基板を提供してきた。imecはこの300mm QST基板を用いてGaNパワーデバイスの開発を始めた。実験では300mm QST基板上に、Aixtron製のHyperion MOCVD装置を用いて、5μm厚のGaN HEMT構造を作製した。この試料を評価したところ、破壊電圧は800V以上になった。これは、GaNの熱膨張係数に適合したQST基板では、大口径になってもGaNの結晶成長が安定していることを示すものだという。
シリコンウエハー上へのGaN成長においては、大口径化すると「基板の反り」などが課題となっていた。300mm QST基板は、GaNと熱膨張係数が同等で、「反り」や「クラック」がない300mm GaNエピタキシャル成長を可能にした。大口径の基板を用いて量産すれば、デバイスコストを削減できるとみている。
信越化学は既に、150mmと200mmのQST基板については生産設備の増強を進めている。現在は300mmQST基板の量産化にも取り組んでいる。
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