山口大学や大阪大学、立命館大学、ファインセラミックセンター(JFCC)らによる共同研究グループは、弱酸性水溶液中における二酸化マンガン(MnO2)の析出/溶解反応を利用し、2電子移動によって可逆的に動作する「水系亜鉛−マンガン二次電池」を開発した。
山口大学や大阪大学、立命館大学、ファインセラミックセンター(JFCC)らによる共同研究グループは2025年10月、弱酸性水溶液中における二酸化マンガン(MnO2)の析出/溶解反応を利用し、2電子移動によって可逆的に動作する「水系亜鉛−マンガン二次電池」を開発したと発表した。
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く携帯機器や電気自動車(EV)などの用途で広く普及している。ただ、系統電力に直結される定置型の大規模蓄電システム用途としては、安全性やコスト面などで課題もあった。
こうした中で注目されているのが、安全性や環境適合性、コスト面で優位な水系二次電池だ。例えば、亜鉛−二酸化マンガン(Zn−MnO2)二次電池などが研究されてきた。しかしこれまで行われてきたアプローチでは、「理論容量は大きいが、可逆性が低く長期安定動作が困難」「可逆性は良好だが、理論容量が小さい」など課題もあった。
研究グループは今回、集電体にカーボンフェルトを用い、MnO2の析出量を大幅に増やした。また、弱酸性水溶液中にバッファーとFe3+レドックスメディエーターを導入することで、従来は非可逆であったMnO2の析出/溶解反応を、完全可逆とすることに成功した。
また、電気化学水晶振動子マイクロバランス(EQCM)により、Fe3+が存在すれば充放電過程での質量変化が完全可逆であることを実証した。
放射光X線分析を行った結果、Fe3+を添加した系では、還元生成したFe2+によって、Mn(III)酸化物が化学的に還元され、自らは再酸化されることでMnO2の完全溶解を仲介するという。このメディエーションサイクルによって、Zn−MnO2電池の二次電池化に成功した。
負極にZn箔を、正極にカーボンフェルトをそれぞれ組み込んだフルセルを試験したところ、面積比容量は5mAhcm-2でクーロン効率は90%以上となった。この時、MnO2質量基準でエネルギー密度は909Whkg-1、パワー密度は364Wkg-1を達成した。
今回の研究成果は、山口大学大学院創成科学研究科の中山雅晴教授や大阪大学産業科学研究所の片山祐准教授、立命館大学SRセンターの入澤明典准教授、ファインセラミックセンター(JFCC)の桑原彰秀主席研究員らによるものだ。
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