東京科学大学と大阪大学の研究チームは、乾電池1本分の電圧で発光する白色有機ELを開発した。青色のアップコンバージョン有機EL(UC-OLED)技術を応用しつつ、発光素子内に水色と黄色の発光色素を加えることにより、低電圧駆動で白色化を実現した。
東京科学大学と大阪大学の研究チームは2025年7月、乾電池1本分の電圧で発光する白色有機ELを開発したと発表した。青色のアップコンバージョン有機EL(UC-OLED)技術を応用しつつ、発光素子内に水色と黄色の発光色素を加えることにより、低電圧駆動で白色化を実現した。
白色有機ELは、TVのバックライトや照明器具の光源として用いられている。ところが、白色の発光を得るには少なくても2.5V程度の電圧が必要となっていた。こうした中、東京科学大学の伊澤誠一郎准教授らはこれまで、2種類の有機分子界面におけるアップコンバージョン過程を利用し、青色の有機ELを1.5V以下という低電圧で発光させることに成功してきた。
研究チームは今回、アップコンバージョンを行うため、「三重項−三重項削減(TTA)」を起こす発光材料として青色発光体の「アントラセン誘導体」を、アントラセン誘導体と界面を形成する電子輸送材料として「ナフタレンジイミド誘導体」を、それぞれ用いた。さらに、アントラセン誘導体がホスト材料として機能する発光層に対し、黄色の蛍光体「ルブレン」を少量添加した。
実験ではまず、アントラセン発光層にルブレンのみを加えてみたところ、黄色の発光が支配的となり白色発光には至らなかった。そこで、アントラセン発光層にルブレンおよび、水色を発光するTbPeを加え、UC-OLEDを作製した。このUC-OLEDは、添加する色素の濃度を調整することで、水色と黄色の発光割合を制御することができる。そこで、発光する水色と黄色の混色を最適化し、UC-OLEDによる白色発光を実現した。今回用いた2種類の発光体は、UC-OLEDの電荷輸送特性を損ねることもなく、電圧が1.5V付近でも発光することを確認した。
今回の研究成果は、東京科学大学総合研究院フロンティア材料研究所の伊澤誠一郎准教授、真島豊教授、楊熠妍修士課程学生、Shui Qingjun大学院博士後期課程学生、岩崎洋斗博士後期課程学生、中東大喜修士課程学生、大阪大学大学院工学研究科の相澤直矢助教(テクノアリーナ准教授)、中山健一教授らによるものである。
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