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NVIDIAのGroq獲得 ハイパースケーラー顧客引き留めも狙いか異例の200億ドル取引(1/3 ページ)

2025年12月、NVIDIAがAIスタートアップのGroqを事実上買収することが発表された。取引額はスタートアップの買収としては異例の200億米ドルにものぼるとされる。

» 2026年01月21日 11時00分 公開
[Sally Ward-FoxtonEE Times]

 2025年12月24日(米国時間)、NVIDIAがAIスタートアップのGroqを事実上買収するというニュースが飛び込んできた。この時に明確だったのは、この発表は証券市場が閉まったタイミングで行われ、市場が反応する前に何が起こっているかを理解する時間が与えられたということ。そして、直接的な情報を知る人以外は誰も、一体何が起こっているのか理解できなかったということだ。

 それから約2週間にわたって、多くのアナリストたちは、市場リーダーであり時価総額世界一の企業であるNVIDIAが、なぜ自社とは全く異なるハードウェア/ソフトウェアアーキテクチャを保有するスタートアップをほぼ買収する形になったのか、想定されるさまざまな理由を語ってきた。

 その中には「今回の取引の主な動機は、かつてGoogleの『Tensor Processing Unit(TPU)』のアーキテクトを務め、現在はGroqのCEOであるJonathan Ross氏をはじめとして、Groqの開発チームの人材を獲得することではないか」と示唆するものもあった。

 以下に、現時点で分かっていることについて概要を示す。正直なところ、現段階では答えよりも疑問点の方が多いが、米EE Timesの見解もまとめておく。

Groq CEOのJonathan Ross氏(左)と、米EE Times 記者のSally Ward-Foxton(右)。Ross氏はGroqのPCIeカードを披露した Groq CEOのJonathan Ross氏(左)と、米EE Times 記者のSally Ward-Foxton(右)。Ross氏はGroqのPCIeカードを披露した[クリックで拡大]

これまでの買収との共通点/相違点

 NVIDIA/Groq両社の発表時の声明によると、NVIDIAはGroqの技術に関して非独占的なライセンス供与を受け、Groqの開発チームの主要メンバーを迎え入れるという。しかし実際のところ、Groqは解体された状態で、GroqのAI推論プラットフォーム「GroqCloud」の運用継続のための小規模なチームが残っているだけだという。

 NVIDIAは、GroqのハードウェアIP(Intellectual Property)からチップ/システム設計、同社の「秘伝の技術」を実現するコンパイラスタック、高度なソフトウェアスタックまで、全ての技術のライセンス供与を受けるとみられる。また、Groqのハードウェアインフラや開発コミュニティーは、GroqCloudが引き続き維持していくようだ。

 NVIDIAが最近、ネットワークチップのスタートアップであるEnfabricaを事実上買収した際にも、今回と同様の取引が見られた。その動機は、規制当局の調査や独占禁止法違反の疑いを回避するためだと考えられる。GroqCloudの「残骸」が、この技術を部分的にどこかにライセンス供与するためのものになるとは考えられず、また「非独占的なライセンス」としているのは、独占禁止法違反の疑いを回避するためだとみられる。NVIDIAは、Arm買収が失敗に終わった時にかなりの打撃を受けていて、それと同じシナリオを確実に回避したかったのだろう。しかし今回の状況は、その時とは大きく異なっている。

 Enfabricaの取引の時にうわさされていた金額は9億米ドルだった。アーリーステージのスタートアップとしてはかなりの金額だが、現在の状況を踏まえると法外とはいえない。Groqはそれよりも規模が大きく実績もあるスタートアップだが、ほぼ買収に近い形とするための取引額は、Enfabricaの20倍以上となる200億米ドルに達するといううわさだ。

 これは桁違いの差である。Enfabricaの場合、ほぼ買収に近い形の取引は、少なくとも一部は人材を獲得するためであったことが分かる。Rochan Sankar氏とShrijeet Mukherjee氏が率いるEnfabricaは、非常に優れた人材で構成された一流のチームを保有していた。Groq CEOのRoss氏も、常にトップクラスの人材だけを採用していることで知られていて、Groqは確かに素晴らしい人材がそろったチームだ。しかし、数百名の人材獲得を主な取引動機とするには、200億米ドルという金額にはただただ納得がいかない。

 NVIDIAにとってGroqが魅力的な理由は、何か他にあるのだろうか。

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