大阪大学とフィックスターズの研究グループは、量子化学向けの状態ベクトル型シミュレーターとして、問題サイズや量子回路サイズのいずれにおいても世界最大のシミュレーションを実行することに成功した。
大阪大学量子情報・量子生命研究センター(QIQB)の水上渉教授と平岡昇真技術補佐員、西田翔技術補佐員、フィックスターズの西寺勇裕氏らによる研究グループは2026年3月、量子化学向けの状態ベクトル型シミュレーターとして、問題サイズや量子回路サイズのいずれにおいても世界最大のシミュレーションを実行することに成功したと発表した。
創薬分野や気候変動対策に寄与する新材料の開発などに向けて、高度な量子化学計算が可能となる「誤り耐性量子コンピュータ(FTQC)」の実用化が期待されている。そのためには、FTQCで動作する量子アルゴリズムを事前に開発し、検証しておく必要があるという。特に、量子アルゴリズムのサブルーチンとして用いられる量子位相推定法(QPE)は、困難な解析を可能にするといわれている。
研究グループは今回、QPEの中でも必要な量子ビット数が少ないアルゴリズム「反復的QPE(IQPE)」に着目した。補助量子ビットが1つで済む。その上量子回路を小さく、浅く構成できる。このため、完全なFTQCが完成する前の「早期FTQC」とも高い親和性があるという。
そこで、大規模GPUクラスター向け量子化学用量子計算シミュレーター「chemqulacs-gpu」にこのIQPEを実装。並列計算手法も新たに開発し適用した。なお、chemqulacs-gpuは、産総研量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センターにある量子・古典融合計算基盤「ABCI-Q」のシステムHに搭載されたNVIDIA H100 GPUのうち、最大1024台で実行した。
この結果、最大問題サイズはH2O分子で42スピン軌道系の計算に、最大回路サイズはFe2S2で41量子ビット回路の計算に、それぞれ成功した。QPEを用いたこれまでの研究では、量子化学の問題に対し40量子ビットが最大とされてきたが、今回の研究でこの壁を突破した。
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