カシオ計算機と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、カシオの高精度測位システム「picalico(ピカリコ)」を用いて、月面探査の測位に向けた共同研究を行っている。共同研究の内容や、JAXA相模原キャンパスで実施された測位実験の様子を紹介する。
カシオ計算機(以下、カシオ)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2026年2月4日、JAXA相模原キャンパスで、カシオの高精度測位システム「picalico(ピカリコ)」を用いて、月面探査を想定した測位実験を実施した。
現在、月面探査や基地建設に向けた技術開発が進んでいる。その要となるのが測位技術だ。地球上では全地球測位システム(GPS)が多く用いられているが、月面ではそうした測位システムは未整備だ。そこで有効なのが可視光通信による測位で、JAXAとカシオは2021年から共同研究を進めている。
共同研究の中心となっている技術は、カシオの可視光通信技術であるpicalicoだ。同技術はもともとカシオが倉庫や工場内のフォークリフトなどの運行管理に向けて開発したものだ。
picalicoでは、あらかじめ座標情報を登録した3個以上のLEDライトを用いる。LEDライトは赤/緑/青の3色に光るもので、各ライトに固有の発光パターンがあり、発光パターンがIDの役割を果たす。それをフォークリフトなどの車体に搭載されたカメラが捉えると発光パターンからどのLEDライトか分かり、車体の座標を算出できる仕組みだ。LEDライトとカメラの他にはコンピュータ、加速度センサー、バッテリーを用いる。倉庫/工場向けには、2019年から提供を開始している。
カシオとJAXAの共同研究では、この技術を月面でも利用することを目指す。カシオ計算機 R&D統轄部 SWHW技術開発部 宮本直知氏は「picalicoに用いるカメラやコンピュータ、LEDライトは汎用的な小型のものだ。地球から月面まで機材を運搬する際は重量に応じて大きなコストがかかるので、小型の機材で利用できるpicalicoは有効だ」と説明する。ローバーにもともと備わっているカメラやコンピュータを使うことも考えられる。
倉庫向けに開発されたpicalicoを月面で利用するには、広さや凹凸への対応が課題となる。JAXAとカシオは、倉庫よりも広い面積のテストフィールドでの実験や、凹凸に対応した新しいアルゴリズムの開発などを進め、精度を高めてきた。
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