そこで富士通と大阪大学は、位相回転ゲートと論理Tゲートを融合させたSTARアーキテクチャ ver.3を開発した。位相回転ゲートがエラーを起こすと、本来θ(シータ)の回転を行うところ、−θ回転してしまう。これを補正するため、次は2θ回転、それも失敗したら4θと、エラーを重ねて回転角が大きくなることが計算精度に悪影響を及ぼしていた。新アーキテクチャでは、位相回転角が設定していたしきい値を超えたとき、論理Tゲートに切り替える構造にしたことで、計算精度を10倍以上向上したという。
また、分子エネルギー計算で用いる分子モデルの最適化も実施。分子モデルを多数の項に分割し、項の重要度に応じて時間発展法とランダムサンプリング法を使い分けるのが従来手法だが、近似精度を維持しつつ分子モデルを変形して重要度の分布を変え、2つの手法のバランスを最適化した。分子エネルギー計算のための量子回路に含まれるゲート数を最小化し、計算手法を大幅に削減できるとする。
富士通と大阪大学の検証では、従来のFTQCアーキテクチャを用いた場合と比べて量子ビット数を15分の1〜80分の1程度に低減できたうえ、物理エラー率を0.01%から0.1%に緩和しても、Early-FTQC時代の量子コンピュータで計算できることを確認したという。計算時間も3桁短縮できたとする。
例えば、創薬分野で重要な酸化酵素とされるタンパク質のシトクロムP450の分子計算を0.01%の物理エラー率で行う場合、従来のFTQCアーキテクチャでは74万量子ビットを使い膨大な時間をかけて計算する必要があったところ、4万量子ビットで9日と、現実的な量子ビット数と日数で計算できる見込みが得られたという。本技術は超伝導やイオントラップ、光など、量子コンピュータの方式を問わず適用可能で、複数台の量子コンピュータで並列計算すれば、さらに時間を短縮できるとする。
富士通の富士通研究所フェロー兼量子研究所長を務める佐藤信太郎氏は「現時点では比較的分子数の小さい分子の計算しかできないが、今後さらにSTARアーキテクチャなどを改善することで、より大きな分子の計算にも適用したい。将来的には金融や医療など、異なる分野への適用も考えている。実用的な量子計算ができるだけ早く実現できるよう、量子コンピューティングに必要なリソースを減らす努力を続けていく」とした。
「世界最高」電力効率74.3%のGaNパワーアンプ、富士通
LLMの1ビット量子化、エッジ対応「MONAKA-X」も 富士通の最新戦略
量子コンピュータ開発で天然シリコンが利用可能に、東京科学大
量子化学用量子回路シミュレーションで限界突破、大阪大ら
「世界最高」品質の量子光、誤り耐性型量子コンピュータに貢献Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
記事ランキング