EUVリソグラフィ世代では、レジストは大きく二系統に分かれる。
(1)化学増幅型EUVレジスト(CAR-EUV)
ArF世代の延長線上にある化学増幅型レジストで、ベースポリマーは脂環式メタクリレート系、PAGはパーフルオロアルキルスルホネート系である。現行の量産EUVリソグラフィでは依然として主流である(Naulleau, "Extreme Ultraviolet Lithography," SPIE, 2019)。
CAR-EUVは、ナフサ依存(ベースポリマー、溶剤)とPFAS依存(PAG)の両方を最も濃厚に持つ。すなわち、本稿で論じる二重の依存が最も先鋭化した素材である。
(2)金属酸化物レジスト(MOR)
Inpria(2021年JSR傘下)が先行してきた金属酸化物レジストは、有機ポリマーとPAGに依存しない設計思想を持つ(JSR Corporation, "JSR Announces Agreement to Acquire Inpria," 2021)。スズ酸化物クラスター等を主成分とし、EUV吸収率と解像度の向上を狙う。
しかし、金属酸化物レジストでも溶剤と添加剤にはナフサ由来成分が残る。また、量産適用範囲はまだ限定的で、CAR-EUVの完全置換には至っていない。さらに、廃液処理におけるスズの環境規制という別のリスクも抱える。なお、第2.5節で述べた通り、MORはPFAS Free戦略の有力候補でもあるが、量産での主流化には依然として時間を要する。
EUVレジストは、ArF世代と比較して以下の点でさらに脆弱である。
(1)純度要求の厳格化
EUV(13.5nm、92eV)の光子エネルギーは化学結合エネルギーの数十倍に達するが、ppmオーダー以下の金属不純物が二次電子放出を介して欠陥に直結するという単純な描像は、定量的には成立しない。各元素のEUV吸収断面積(例:C ≒ 0.58×10−18cm2、Sn ≒ 18.25×10−18cm2)を比較しても、両者の差は30倍程度であり、ppmレベルの金属不純物による二次電子寄与は、感度・LWR・欠陥のいずれにおいても支配的とは言えない。
一方で、EUVレジストにおいて金属不純物管理が極めて厳しい(ppbから一部ppt級)ことは事実であり、その理由はむしろ、(a) 微小粒子・金属凝集体に起因するキラー欠陥(パーティクル欠陥)、(b) ベースポリマーや酸触媒系との副反応による感度ばらつき、(c) ファブ側プロセス全体での金属コンタミ管理基準との整合――にある。原料モノマー、溶剤、PAG全てに、ArFよりさらに厳しい純度が要求されるのは、これらの理由による。
(2)供給メーカーの寡占の深化
EUVレジストの量産供給能力を持つメーカーは、JSR、東京応化工業、信越化学、富士フイルムの実質4社に絞られる(富士経済「2023 電子材料・部材市場の現状と将来展望」)。ArF世代では複数の海外メーカーも競合していたが、EUV世代では日本企業の寡占がさらに進んだ。
(3)微小消費量と高単価
EUVレジストの1ウエハー消費量はArFより少ないが、単価が極めて高い(数万円〜数十万円/kg)。これは「在庫を厚くしてしのぐ」戦略を、コスト面でも難しくする。
ここで前稿(90-2)の議論と接続する。ASMLのEUV露光装置は、真空槽内のレチクル静電チャック裏面にHeを使用している可能性がある(van de Kerkhof et al., ASML, Proc. SPIE各巻)。しかし仮にこの問題が露光プロセスに影響しないとしても、EUVレジストが届かなければ、EUV露光装置を稼働できたとしても、レジストによる回路パターンは形成できない。
つまり、EUV世代は「Heも、ナフサ由来材も、PFAS系PAGも、全てがそろって初めて動く」二重・三重のボトルネック構造にある。TSMCの2nm、Samsung ElectronicsのSF2、Intelの18A、Rapidusの2nmなど、先端ノードほどこの依存が深いため、前稿で論じた「先端から最初に、最もひどく崩れる」非対称性は、フォトレジスト次元でさらに深刻化される。
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