大阪大学産業科学研究所の研究グループらは、フラッシュランプアニール(閃光熱処理)と呼ばれる手法を用い、磁気トンネル接合(MTJ)を約1.7秒で完了させることに成功した。従来の熱処理に比べ加熱時間を最大で数千分の1に短縮できるという。
大阪大学産業科学研究所の研究グループらは2026年5月、フラッシュランプアニール(閃光熱処理)と呼ばれる手法を用い、磁気トンネル接合(MTJ)を約1.7秒で完了させることに成功したと発表した。従来の熱処理に比べ加熱時間を最大で数千分の1に短縮できるという。
キセノン(Xe)ランプによる高エネルギーのフラッシュで、ミリ秒単位の熱処理を行うフラッシュランプアニールは、元素の拡散を抑えながら材料表面のみを局所的に熱処理できる。今回はこの手法を磁気メモリ(MRAM)や磁気センサーに用いられるMTJに適用し、熱処理時間を大幅に短縮した。熱処理炉を用いた従来方法では、デバイス特性を最適化するため、300〜500℃の加熱を数十分から数時間も行っていたという。
今回の実験では、フラッシュランプアニールを用いてMTJの熱処理を行い、ほぼ100%のトンネル磁気抵抗(TMR)比を得ることに成功した。具体的には、ミリ秒単位の光パルスを繰り返し照射することで、MTJ表面を瞬間的に1000℃程度に加熱した。これにより、約1.7秒で同等の特性が現れることを実証した。
研究グループは、透過電子顕微鏡(TEM)により断面を観察した。この結果、フラッシュランプアニール後のMTJにおいて、トンネル障壁層「MgO層」や磁性体層「Co-Fe-B層」の結晶化が進行し、高い抵抗変化率が得られることを確認した。エネルギー分散型X線分析(EDX)による元素分布を評価したところ、従来の熱処理と比べCo-Fe-B層のBの元素拡散挙動に違いがあることを確認した。
特に、短時間の非平衡加熱を行うフラッシュランプアニールでは、元素拡散が相対的に抑えられた状態で結晶化が進んだ可能性があるという。今後は、放射光施設を用いた詳細な構造解析を行うことで、非平衡課程における結晶化と拡散の関係性などを明らかにしていく予定である。
今回の成果は、大阪大学産業科学研究所の今井亜希子助教、千葉大地教授(兼東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センターのセンター長)、荒木徹平准教授、関谷毅教授、同大学超高圧電子顕微鏡センターの山崎順教授らによるものである。
高効率で高耐久の円偏光光源を開発、大阪大学ら
144量子ビット国産量子コンピュータ「叡-II」 運用開始
創薬での量子コンピュータ使用が現実的に 富士通/阪大
量子化学用量子回路シミュレーションで限界突破、大阪大ら
イオントラップ量子コンピュータ向け光回路を考案、大阪大
半導体デバイスの熱問題を解決する新たな冷却技術、大阪大らCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
記事ランキング