東北大学は、リチウム金属電池の電解液濃度について、電池性能を最大化するための新たな指標を発見した。「イオンの協調輸送」と「保護膜(SEI)の強さ」が高性能化のカギを握るという。
東北大学金属材料研究所の李弘毅助教、市坪哲教授の研究グループは2026年7月、リチウム金属電池の電解液濃度について、電池性能を最大化するための新指標を発見したと発表した。「イオンの協調輸送」と「保護膜(SEI)の強さ」が高性能化のカギを握るという。
リチウム金属電池は、現行のリチウムイオン電池に比べ、高いエネルギー密度を実現できる。ただ、充放電時にデンドライト(針状リチウム)が形成され、電池の寿命や安全性を低下させるなど、課題もあった。
この対策として、「電解液の濃度を高めればリチウム金属負極が安定する」ことが報告されている。しかし、「特定の濃度でなぜ性能が向上するのか」「電解液濃度の変化がイオン輸送やSEIの形成に与える影響」などについては、十分に解明されていなかった。
そこで研究グループは、リチウムビス(トリフルオロメタン)−スルホニルイミド(LiTFSI)を溶解したEC(エチレンカーボネート)-PC(プロピレンカーボネート)系電解液を用い、その濃度を系統的に変化させながら、「イオン輸送特性」「リチウム析出・溶解挙動」および、「SEIの力学特性」を包括的に評価した。
電解液中のリチウム同位体7Liと陰イオン(TFSI-)に含まれるフッ素同位体19Fの自己拡散係数を、PFG-NMR測定によって解析した。この結果、特定の濃度領域で2つの自己拡散係数が近い値を示し、Li+とTFSI-を含むイオン種が、協調的に移動していることが分かった。この条件では、負極表面へのリチウム析出がより均一となって、優れた充放電安定性が得られた。
また、SEIが形成されたリチウム金属表面に対し、ナノインデンテーション測定を行い、深さ数十ナノメートルにおける硬さと弾性率を評価した。これにより、イオンの協調輸送が機械的に安定したSEIの形成を促進し、デンドライトの成長が抑えられることを実証した。
上から、各濃度のLiTFSI/EC-PC電解液の外観。電解液濃度の増加に伴う溶媒和構造および、イオン輸送機構の模式図。各濃度の電解液における7Liと19Fの自己拡散係数。SEIを含むリチウム金属表面近傍における硬さと弾性率の比(H/E比) [クリックで拡大]出所:東北大学研究グループは今後、さまざまな溶媒やリチウム塩を用いた電解液系の研究を行い、イオン輸送とSEI力学特性の相関を明らかにしていく。なお、今回の研究成果は、ナトリウム蓄電池やマグネシウム蓄電池などの電極/電解液界面の設計指針として活用できる可能性があるとみている。
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