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» 2008年11月25日 00時00分 公開

網状の金属材料でアンテナ特性向上、EBG構造実用化への取り組み進む無線通信技術 アンテナ設計(2/2 ページ)

[前川慎光,EE Times Japan]
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不要放射を抑制

 前述の宇宙航空研究開発機構の川崎氏らの研究グループは、不要放射の抑制を狙って、AIPAA(Active Integrated Phase Array Antenna)システムのアンテナ部分にEBG構造を適用した。同氏らのAIPAAシステムは、増幅器や移相器といった回路部とアレー・アンテナ部を一体化することでパワー送信部分の小型化や軽量化を図ったもので、データ伝送と電力伝送を同時に実現することを狙う。

 同氏らは、EBG構造を活用することで、アンテナの放射効率の向上や、アンテナ部と回路部の相互干渉の抑制を図りたい考えである。いずれも、不要放射を抑制することで実現する。 

 EBG構造で不要放射を抑えられる理由は、そのフィルタ特性にある。不要放射とは、狙った方向以外に放射する電磁波を指す。グラウンド素子の端部から空間に放射したり、グラウンド素子と放射素子の間に誘電体材料がある場合には、表面波(Surface Wave)として誘電体を伝搬する。このような現象は、 指向性の観点では、サイドローブやリップルの発生という変化で現われる(図3)。

図 図3 不要放射を抑制する グラウンド素子の端部から空間に放射される電磁波や、放射素子とグラウンド素子間の誘電体を伝搬する表面波が、指向性特性のリップルやサイドローブの要因となる。これをEBG構造で抑制できる。

 このような不要放射を、グラウンド素子にEBG構造を形成したり、誘電体にEBG構造を作り込んだりして抑制する。EBG構造はインダクタンス(L)とキャパシタンス(C)で構成する等価回路として表現できる。このLとCで構成されたフィルタ特性を、周期構造の最小単位である「単位セル」の形状や寸法、繰り返し回数を、シミュレーションなどで調整する。

 EBG構造の実用化に向けた課題は複数あるが、その1つは所望の特性を得るには寸法が比較的大きくなってしまうことだ。また、周期構造を有するため、周波数依存性が高いことも原理的な課題である。すなわち、周波数が少し変化するだけで、透過特性や遮断特性が大きく変わってしまう。そのため、「EBG構造で、広い帯域幅を持ったアンテナを実現するのは難しい。従って、限定的な用途で使われることになるのではないか」(東北大学の澤谷氏)という指摘がある。

 このほか、前述のように電源系雑音の抑制にもEBG構造は効果を発揮する。システムLSIの動作周波数の高速化に伴って、電源系雑音への対策は年々重要度を増している。この課題解決に、EBG構造の活用が効果的とされているのだ。しかし、EBG構造をプリント基板に作り込んだ製品が実際に市場に出回るには、時間がかかりそうだ。電源系雑音の抑制には、さまざまな解決策が用意されているからである。

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