このほか、携帯電話機をはじめとした携帯型電子機器に組み込むGPS受信ICの改善も進んでいる。英Air Semiconductor社は、位置情報を継続的に取得可能なGPS関連技術「Always On」を開発し、これを適用したIC「Airwave-1」のサンプル出荷を開始した(図2)。
この技術の特徴は、位置精度の高低を動的に調整する仕組みを実現したことで、GPS衛星を捕捉(トラッキング)して信号を受信する際の平均消費電流を1mAに抑えたことである。これによって、電池駆動の携帯型電子機器であっても、チップを常時動作させて、GPS信号を継続的に受信可能にした。
継続的に取得している位置情報は、自動的にチップ内部に保存する仕組みである。屋内に入ってGPS信号の受信レベルが下がり、位置情報を算出できなくなった場合でも、最後に保存した位置情報が使える。位置精度の観点からは難があるものの、「利用者が意識することなく、位置情報が常に更新・保持されることは、屋内で位置情報を利用したサービスを利用する際に重要だ」(同社のVice Pres-ident Business Development Asiaの和泉任一氏)と説明する。サンプル出荷を始めたAirwave-1はデジタル・カメラに向けた品種で、現在携帯電話機をはじめとした携帯型電子機器に向けた「Airwave-2」を開発中である。
また、セイコーエプソンとドイツInfineon Technologies社は共同で、受信感度が−165dBと高いことが特長のGPS受信IC「XPOSYS」を開発した。「A(Assisted)GPS方式のチップとしては、業界で最も高い感度を実現した」(セイコーエプソンのGPSビジネス推進部の部長を務める北沢豊氏)という。
特徴はこれだけではない。位置情報を算出するには、少なくとも4つのGPS衛星からのGPS信号を受信する必要がある。このとき、4つのGPS信号の受信強度がすべて−165dBと低くても、位置情報を算出可能だとする。従来のGPS受信ICでは、4つのGPS信号のうち少なくとも1つの受信強度が十分に大きい必要があったという。これらの改善によって、「従来のGPS受信ICでは、一般的なビルやオフィスの中では窓の近くでしか位置情報を得られなかった。これに対して、開発したチップではビルやオフィスの内部の窓から離れた場所でも位置情報を得られるようになった」(同氏)と主張する。
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