オランダMAPPER Lithography社(MAPPER)とフランスCEA-Leti(フランス原子力庁の電子情報技術研究所)は、最初の発表から数カ月を経てようやく、300mmウエハーに対応したMAPPER社の電子ビーム・リソグラフィ装置を1台、仏グルノーブルにあるCEA-Letiの施設に導入したことを明らかにした。
この装置は、「IMAGINE」と呼ばれる3年にわたる技術開発計画で利用する予定だ。同計画は、ハーフピッチが22nm以降のLSI製造に向けた電子ビーム直接描画によるリソグラフィ技術の開発を目的としており、装置の評価、パターニングとプロセスの統合、データ・ハンドリング、所有コストの分析などのテーマに取り組む予定である。
IMAGINE計画では、露光モジュール単位でウエハー10枚/時というスループットの実現を目標に掲げている。CEA-Letiによると、この目標が達成されれば、1m2当たりのウエハー枚数でほかの技術と競争できる処理能力を獲得でき、モジュール性や消費電力の観点でもより手法になりうるという。
MAPPER社によると、電子ビームを利用するリソグラフィ装置では、1万本を超える電子ビームを使ってウエハー上に回路パターンを並列に直接描画するため、現行のリソグラフィ装置で使われている非常に高価なフォトマスクが不要になるという。300mmウエハーに対応した「110ビーム・プラットフォーム」に対して今後2年間、改善を加えることで実用化する予定である。
MAPPER社とCEA-Letiの最初の発表は2008年12月にさかのぼる。MAPPER社の300mm対応電子ビーム・リソグラフィ装置を仏グルノーブルにあるCEA-Letiの施設に導入する合意書に署名したという内容だった。
CEA-LetiでCEOを務めるLaurent Malier氏は、2009年6月22日に開催されたthe 11th Leti Annual Reviewにおいて、300mm対応の電子ビーム・リソグラフィ装置を、MAPPER社側の若干の遅れが理由でまだ入手できていないとEE Times Europe誌の記者に語っていた。
同氏は、リソグラフィに関する議論の中で、フォトマスクのコストが高騰していることを強調し、今後もCEA-Letiは電子ビーム直接描画によるリソグラフィ技術の研究を続けると表明した。さらに同氏は、スループットを十分高めることができれば、試作品の作成(プロトタイピング)が柔軟になるだけでなく、有望な製造ソリューションだと確信していると述べた。
同氏はインタビューの中で、「CEA-Letiは、EUV(極端紫外線)には目がない。米University at Albanyの研究チームの結果を見ているので、EUVの研究を続行することは無意味だと判断した。彼らはEUVについて研究を進め、私たちは電子ビームの研究に取り組む。電子ビームがあらゆる要件を満足できるという十分な確信はないが、電子ビームがわれわれの持ち駒だ」と話を結んだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.