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ARM本社から上級副社長が来日、Cortexシリーズの製品戦略を語るプロセッサ/マイコン ARMマイコン

» 2009年11月09日 15時54分 公開
[笹田仁,EE Times Japan]

 アームは2009年11月9日、新プロセッサIP(Intellectual Property)「Cortex-A5」を発表した(図1)。英ARM社からマーケティング担当上級副社長のIan Drew氏と、プロセッサ部門マーケティング担当副社長のEric Schorn氏が来日し、Cortexシリーズの製品戦略とCortex-A5の特長を語った。

 先に壇上に立ったDrew氏は、Cortexシリーズ全体について説明した。同氏はARM社が継続的に「何よりも電力効率を重視してIPの設計を続けている」と語り、特に電力効率が良いIPとして同社が販売している「Cortex-M3」を例に挙げた。Cortex-M3は8ビット、16ビットのマイコンと同程度の消費電力で32ビットのコードが動くコアだ。同社はこの製品で8ビット、16ビット・マイコンの置き換えを狙っている。

図1 図1 ARM社の新プロセッサ・コア「Cortex-A5」のブロック図
最大64Kバイトの1次キャッシュ・メモリーを搭載できる。

 同氏によると、Cortex-M3はモーターを制御するマイコンでの採用例が多いという。例えば、米Texas Instruments社は2009年10月にCortex-M3を採用したマイコン「Stellaris」シリーズを発表している。モーター制御に向けたものだ。「8ビットのマイコンでモーターを制御するよりも、32ビットのマイコンでモーターを制御した方が、より細かく回転速度を制御でき、機器全体の消費電力を削減できる」とDrew氏はCortex-M3の利点について語った。

 そして、同氏はこのように、現在8ビット、16ビット・マイコンが担っている領域は、プロセッサ業界全体の成長率を超える勢いで成長すると予測し、2010年にはこの領域に向けた新しいプロセッサ・コアIPを発表する予定だと明かした。

 次のターゲットとしてDrew氏はスマートホンやネットブックなどのインターネットにつながる機器を挙げた。携帯電話機やスマートホンについては、同社はすでに100を超える半導体メーカーにライセンスを提供しており、圧倒的なシェアを誇っている。同社の次のターゲットはネットブックやノート・パソコンだ。同氏は「ノート・パソコンは10年前から大きく変化していない、ARMプロセッサでノート・パソコンの世界を変えていく」と語り、その例としてARMプロセッサを搭載した米Dell社の「Latitude E4200」を掲げて見せた(図2)。この製品はIntelプロセッサでWindowsを起動するだけでなく、ARMコアのプロセッサでLinuxを起動することが可能だ。

図2 図2 ARM社マーケティング担当上級副社長のIan Drew氏
手にしているのはARMプロセッサを搭載した「Dell Latitude E4200」

 さらに、米Adobe Systems社とFlash技術に関して協業を進め、ARM版のFlash Playerを開発したことや、英Canonical社がARM版Ubuntu Linuxを開発したことなどを挙げ、パソコン向けソフトウエアを開発していた企業がARMに注目し始めていることを指摘した。そして、同氏は「これらの動きはほんの出発点で、これからこの動きはどんどん加速する」と語った。

 そして同社の目標として「あらゆる機器から、どんな場所からでもインターネットにつながる環境を作ること」を挙げ、そのための第一歩がCortex-A5だと語った。

 ARM9と同じチップ面積でARM11以上の性能

 続いてSchorn氏が登壇し、Cortex-A5の想定用途と、性能、消費電力について説明した(図3)。Cortex-A5は、既存のCortex-A8、Cortex-A9に比べると、やや性能は低い。8段、イン・オーダー実行のパイプラインを備え、1.5 Dhrystone MIPS/MHzの性能を発揮する。ちなみに、Cortex-A8は13段、イン・オーダーのパイプラインを備え、性能は2.0 Dhrystone MIPS/MHz。

図3 図3 ARM社プロセッサ部門マーケティング担当副社長のEric Schorn氏
Cortex-A5で、デジタル・カメラやデジタル・フォト・フレームも狙っていくと語った

 同氏はCortex-A5の想定用途として、「インターネット接続機能を持つ可能性があるあらゆる機器」を挙げ、例としてスマートホン、テレビ受像機、セットトップ・ボックス、などを挙げた。さらに、デジタル・カメラやデジタル・フォト・フレーム、冷蔵庫などもターゲットに挙げ、「Cortex-A5を使えば、このような機器にもコストを抑えながらインターネット接続機能を追加できる」と説明した。

 そしてSchorn氏は、Cortex-A5のターゲットを別の見方から説明した。それはすでに広く普及している「ARM9」や「ARM11」の置き換えだ。Cortex-A8とCortex-A9はARM社としてはかなり高性能なコアであり、従来ARMコアを利用していなかった機器への導入も狙っている。

 一方、ARM9やARM11は携帯電話機など、大量の機器への導入実績がある。「ARM9は250社以上、ARM11は70社以上にIPを提供している。この部分を置き換えられればCortex-A5はかなりのライセンス契約を獲得できるだろう」とSchorn氏は見込んでいる。

 ARM9やARM11との置き換えを意識して、Cortex-A5はチップ面積をARM9と同等に抑え、ARM11以上の性能を発揮することを狙った。Cortex-A5は、ARM9と比較して80%高い性能を発揮する。ARM11との比較では、20%高性能だという。

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