モバイル機器のユーザーインターフェイスに関しては、モバイル機器の筐体背面を使った入力インターフェイスの提案があった。現在のモバイル機器の情報入力が不便だという利用者の不満の解消を目指したもので、KDDIが展示した(図2)。
KDDI総研が、タブレットPCの使い心地について2010年夏に調査したところ、「情報の入力インターフェイスについての不満が、意外にも多い」(KDDIの開発担当者)という結果を得た。利用者がタブレットPCのタッチパネルを操作すると、利用者自身の操作によってディスプレイの情報が隠れてしまう。KDDIは、ここに不満の原因があると考えた。
それならば、入力インターフェイスを筐体の背面に設置しようというのが発想である。筐体の背面ならば、利用者の操作がディスプレイの情報表示を邪魔することはない。
現在は基礎研究の段階で、実用化時期は未定である。コンセプト提案用に展示した試作機では、赤外線センサーと機械式のキーボードを、タブレット型端末の背面に設置した。利用者が背面に触れると、その位置を赤外線センサーが検出し、位置に応じたポインタがディスプレイに表示される仕組みである。
3D映像技術や新たな情報伝達技術など、高機能化が進むモバイル機器は、どこに行き着くのか…。この問題を解く鍵は、「日常生活に深く溶け込んだモバイル機器」という言葉にありそうだ。実際、CEATEC JAPAN 2010では、健康管理(ヘルスケア)にモバイル機器を役立てようという展示や、利用者の行動を支援するさまざまな情報の提示に使おうというデモがあった。
インターネットに接続して情報を収集したり、電話や電子メールを使って情報を伝えるという「使いこなすモバイル機器」から、利用者の健康を管理したり、利用者の行動を補助したりという「支援してもらうモバイル機器」への発展である。
まず、ヘルスケアに関しては、冒頭に述べた通り、コンティニュア・ヘルス・アライアンスの存在感が増していた。昨年のCEATECでは、同アライアンスのメンバー企業であるインテルのブースで取り組みの一部を紹介していたのに対して、今回は独立したブースを設けた。
会場では、同アライアンスのガイドラインに準拠した血圧計や体重計、活動量計といったヘルスケア機器をはじめ、ノートPCや携帯電話機、健康管理に向けたさまざまなインターネットサービスを一挙に公開した。「当アライアンスの設計ガイドラインに準拠した約20種類のヘルスケアサービスやヘルスケア機器が2011年3月までに実用化される見込みだ」(同アライアンスの担当者)という。
ヘルスケア機器とインターネットサービスを連携させるときの仲介役になるのがタブレットPCやスマートフォン、携帯電話機といったモバイル機器である。
会場では、富士通が同アライアンスの設計ガイドラインに準拠した携帯電話機を初披露した(図3(a))。通信技術そのものは、Bluetooth規格のHealth Device Profile (HDP)であり、目新しくないが、「同アライアンスの承認を受けた初めての携帯電話機だ」(富士通の製品担当者)という。第1弾を2010年11月に発売し、その後も継続的に対応機種を製品化する予定である。
また、NTTドコモもBluetooth規格のHDPに対応した携帯電話機を使い、同アライアンスの各種ヘルスケア機器と連携させることを想定したデモを見せていた(図3(b))。同社が、HDP対応の携帯電話機を展示するのは今回が初めてである。昨年のCEATECでは、接触型ICカード技術「FeliCa」に対応した携帯電話機を使って、ヘルスケア機器からデータを読み取っていた。「携帯電話機やスマートフォンとヘルスケアを連携させるサービスを、今後強化していく」(NTTドコモの説明員)。
このほか、フリースケール・セミコンダクタや、シーエスアール(CSR)などが同アライアンスの設計ガイドラインに向けた無線通信モジュールを展示していた(図4)。フリースケール・セミコンダクタは設計ガイドラインの1.5版に準拠したZigBee通信モジュールを展示した。一方のシーエスアールはBluetooth Low Energy規格に対応した通信モジュールを展示した。Bluetooth LowEnergy規格は、同アライアンスの設計ガイドラインの2.0版に盛り込まれる予定である。
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