MEMS市場は2010年の自動車市場の景気回復によって高い成長率を達成した。ランキング上位のメーカーの成長率も高い。
2010年のMEMS市場は25%成長した。ただし、ファウンドリ各社には明暗があった。
2010年の上位20社にランクインしたファウンドリ企業の売上高は、合計で約5億3500万米ドルに達し、2009年比で10%成長した。自社内向けにMEMSの製造を手掛けていた企業が、民生機器市場や自動車向け市場におけるシェアを獲得したためだとみられる。
STMicroelectronicsは、2億400万米ドルの売上高を上げ、MEMSファウンドリ事業において引き続き首位を維持した。しかし、第2位以下の主要プレーヤーの間では、ランキングに変化が起こった(図1)。
第2位のスウェーデンSilex Microsystemsは、85%の成長を遂げ、売上高が3700万米ドルに達した。主な要因としては、ビアファースト法によって高度にドープされたシリコン貫通電極(TSV:Through Silicon Via)技術に対する需要が高まったことが挙げられる。またAsia Pacific Microsystemsは、約60%増となる3100万米ドルの売上高となり、台湾のメーカーをしりぞけて第4位の座を獲得した。Texas Instrumentsは、売上高が3000万米ドルで、第5位につけた。
ただし、市場シェアの大半を占めたのは、200mmのMEMSウエハーを製造可能な大規模な垂直統合型半導体メーカー(IDM)だった。自動車市場の景気回復による利益を享受したことで成長した。
フランスの調査会社Yole DeveloppementでCEO(最高経営責任者)を務めるジャン・クリストフ・エロア(Jean Christophe Eloy)氏は、発表資料の中で、「BoschやST Microelectronics、パナソニックなどの大規模なIDMは今後も、民生機器向けMEMS市場で大きな成長を遂げていくだろう。また、(TSMCのように)半導体の量産が可能なファウンドリ企業は、さらに重要な位置付けを確保していくだろう」と述べている。
Yole Developpementによれば、TSMCのMEMSファウンドリ関連の売上高は、2009年に約1000万米ドルだったが、2010年にはその2倍となる約2000万米ドルに増加した。この他にも、X-FAB Silicon FoundriesやTowerJazz、United Microelectronics(UMC)などの企業が、規模は比較的小さいものの、堅調な成長を遂げている。また、今回のランキングには入っていないが、Semiconductor Manufacturing International(SMIC)のMEMSファウンドリ事業部門も大きく成長している。さらにGLOBALFOUNDRIESも今後、MEMS市場に積極的に参入していく予定だ。
特殊なMEMSを手掛けるファウンドリ企業は、顧客に対する供給量は少ないが、光や通信、生物/医学などの特定用途に向いているため、高い利益率を確保できている。エロア氏は、「これらのファウンドリ企業は、大きな成長を見込めるわけではないが、収益性が高い」と述べる。このような特殊性の高いファウンドリの中には、他のメーカーとのさらなる差別化を図ることにより、大きな成長を遂げているグループもある。
Sensonor Technologiesは、Infineon TechnologiesがMEMS事業部門をスピンアウトして、タイヤ空気圧監視システムを製造するために設立したファウンドリだ。3500万米ドルの売上高を上げ、第3位の座に急上昇した。
Texas Instrumentsは、2009年は第2位だったが、2010年は第5位に順位を下げた。インクジェットプリンタ市場が成熟して成長が減速し、使い捨てではなく再利用可能なヘッドへと移行していることから、Lexmark Internationalとのインクジェットヘッドの取引きが低迷したためだとみられる。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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