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「3次元PLD」のTabulaが日本事務所を開設、日本市場の開拓に本腰プログラマブルロジック FPGA

既に国内の代理店契約を結んでいる半導体技術商社のルネサスイーストンはデザインサービスや物流機能の提供に注力し、新たに開設した日本事務所がセールスとマーケティング、エンジニアリングの中心的な機能を受け持つ。

» 2011年06月21日 16時51分 公開
[薩川格広,EE Times Japan]

 米国カリフォルニア州サンタクララに本社を置く新興のFPGAベンダーで、「3PLD」と呼ぶ独自アーキテクチャのFPGAを手掛けるTabula(タブラ)は、日本事務所を2011年6月1日付けで東京都内に開設した。2011年6月20日(米国時間)に発表した。同社は既に、半導体技術商社のルネサスイーストンと日本におけるVAR(Value Added Reseller、付加価値再販業者)契約を2011年2月に結んでおり、同年5月にはルネサスイーストンが出展した組み込み機器の総合展示会「第14回組込みシステム開発技術展(ESEC2011)」で国内初出品を果たしていた(参考記事)。今回の日本事務所の開設で、日本市場におけるセールスとマーケティング、エンジニアリングの機能をさらに強化する。同社が海外に事務所を構えるのは日本が初めてだという。

 現在のところ同事務所は3人体制で、いずれもFPGA業界で長い経験を持つ人物だ。具体的には、同事務所の代表でセールスを担当する城利隆氏、シニア・マーケティング・ディレクターの荒井雅氏、シニア・エンジニアリング・ディレクターの白土神一氏である。3人ともに、1990年代から2000年代の後半までFPGAの最大手ベンダーであるXilinxの日本法人に勤務し、それぞれセールスとマーケティング、エンジニアリングの要職を務めた。

 日本におけるルネサスイーストンとの役割分担については、「ルネサスイーストンは顧客の仕様に基づくデザインサービスに注力する他、製品の物流を含む商社機能を担う」(マーケティング担当の荒井氏)と説明する。セールスとマーケティング、それに付随するエンジニアリングサポートについては、日本事務所が中心となって対応するという。

通信インフラ機器に加え、日本では放送映像機器やプリンタ複合機も有力視

 Tabulaは同社初の製品である「ABAX(エイバックス)」を発表済みで、一部品種については既に出荷を始めている。ABAXの実体はSRAMベースのFPGAであり、その点では大手FPGAベンダーのXilinxやAlteraのFPGAと変わらない。特長は、大手が供給するハイエンドFPGA並みのロジック規模を実現しながらも、価格を大幅に低く抑えられる独自のアーキテクチャを採用していることだ(詳細については、上記の「参考記事」を参照されたい)。「最大手ベンダーが供給するハイエンド品と同等の集積規模のFPGAが、同じベンダーが別にラインアップする低コスト品のような価格で利用できる」(荒井氏)。

ALTALT 左図は、Tabula独自のアーキテクチャ「SpaceTime」の概念図。プログラマブルロジック領域に実装した回路をFPGAの動作中に時系列で書き換える、いわゆる「動的再構成(ダイナミックリコンフィギュレーション)」技術に基づく。右図は、このアーキテクチャがもたらすメリットをまとめている。同世代のプロセス技術で製造する既存ベンダーのFPGAと比較した。「価格/性能」とあるのは、実際には単位集積規模当たりの価格を意味しているという。出典:Tabula日本事務所

 この特長を訴求することで、これまで大手FPGAベンダーのハイエンド品を採用していた機器メーカーに食い込む考えだ。通信インフラ機器の他、「日本の機器メーカーが世界で高いシェアを握る分野に注力する。具体的には、放送映像機器やプリンタ複合機などを狙う」(荒井氏)。さらに、医療機器や工業機器一般も視野に入れているという。

 既にABAXの開発キットの提供を始めている。米国での価格は7500米ドル。開発ツール「Stylus(スタイラス)」は無償で提供する。クラウドコンピューティングの形態で提供するツールだが、設計フロー自体は既存のFPGAベンダーが提供するデスクトップ用設計ツールを使う場合と変わらないという。設計データのセキュリティについては、「SAS70の認証を受けた最先端のホスティング機能を使い、グレードの高いデータセンターを利用する。さらに、ユーザーごとやプロジェクトごとに専用のファイアウォールを設けており、守秘性を確保している」(エンジニアリング担当の白土氏)と説明する。

ALTALT 左図は、Tabulaが提供するFPGA開発ツール「Stylus」を使う際の設計フロー。右図は、この開発ツールを提供するクラウドコンピューティング環境の概念図。出典:Tabula日本事務所

 さらにTabulaは、FPGA製品群であるABAXとは別に、ASSP(Application Specific Standard Product、特定用途向け汎用品)の形態で提供する製品群も用意した。ABAXのチップを流用し、特定用途に向けた汎用性の高い機能を同社が作り込んだ上で、標準品として複数のユーザーに販売する製品群だ。Tabulaは物理的にはFPGAと設計データ(ビットストリーム)を供給し、ユーザーはそれらを機能的にはASSPとして使える。これを同社は「ASAP(Application Specific ABAX Product)」と呼ぶ。イーサネットとInterlakenといった具合に、特定のプロトコル間を橋渡しするパケット処理チップ(ブリッジLSI)などを順次投入する計画だ。さらに、データセンターやネットワーク事業者がシステムに直接組み込めるように、そうしたチップを周辺機能とともに搭載したボード製品も用意するという。

図5 ABAXの開発キットに同梱されている開発ボード。出典:Tabula日本事務所

Tabula日本事務所の連絡先

住所:〒108-6028 東京都港区港南2丁目15番1号 品川インターシティ・タワー A棟 28階

電話:03-6717-2742

FAX:03-6717-4141


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