「Kindle Fire」の売れ行きが好調のようだ。Amazonは、一部のアナリストから「赤字覚悟の販売」と推測されるほど端末の価格を低く抑えている。だが、それにはAmazonならではの理由があった。
Amazonから2011年11月に発売されたばかりの電子書籍リーダー端末「Kindle Fire」。同年第4四半期における出荷数は390万台に上るとみられており、タブレット端末の世界出荷台数で13.8%のシェアを獲得すると予想されている。同市場でシェア65.6%と圧倒的な優位を誇るAppleの「iPad」に次いで第2位となる見通しだ。
米国の市場会社であるIHS iSuppliの調査によると、「Kindle Fireはビジネス用途としての使い勝手と、コンテンツの豊富さの組み合わせが絶妙で、タブレット端末の新規購入者はその点に魅力を感じていることが分かった」という。iSuppliでタブレット/モニター調査担当シニアマネジャーを務めるRhoda Alexander氏は、報告書の中で「Kindle Fireの生産計画から、Amazonが同製品にかける意気込みが分かる」と述べている。
Amazonはタブレット端末市場で確実にシェアを伸ばし、それによって、市場シェア4.8%のSamsung Electronicsは第3位に順位を落とすと予想される。Amazonの台頭により、同市場はさらに拡大するとみられている。
iSuppliは、2011年におけるタブレット端末の世界出荷台数は、2010年の1740万台から273%増となる6470万台に達すると予測している。Kindle Fireの出荷台数は、この増加分の約7.7%を占めることになる。
Amazonは独自のビジネスモデルを展開することで、Android対応のタブレット端末を販売する競合他社を寄せ付けない勝利を収めようとしている。
Alexander氏は、「他のAndroidタブレットメーカーのほとんどは、ハードウェアの売り上げのみで利益を出さなければならない。一方のAmazonは、同社の中核事業であるコンテンツの販売を促進する媒体としてKindle Fireを利用する計画だ。この戦略が成功すれば、たとえハードウェアで赤字を出してもそれを十分に補填(ほてん)できる。これは、他のAndroidタブレットメーカーには出来ない強みだ」と述べる。
Amazonは、Kindle Fireのユーザーを同社の商品購入サイトに誘導することで、小売戦略を強化したい考えだ。Kindle Fireの推定部品コストがアナリストらの見積もりよりも低いものであったため、「Amazonは赤字覚悟で販売するつもりなのではないか」という見方もあった(関連ニュース)。だが、それも同社がこうした販売戦略を見越しているからかもしれない。
iSuppliによると、Amazonはこの戦略を推進するためにいくつかの対策を講じているという。
例えば、会員制サービス「Amazon Prime」を1カ月間無料で体験できる。この中には、映画やテレビ番組を無料で視聴できるサービスや、電子書籍を貸し出しするサービス(「Kindle Lending Library」)、数百万点の商品をそろえるAmazonのサイトで購入した商品を2日で配送するサービスなどが含まれる。こうした戦略によって、「Amazon.com」での商品販売の促進を狙いたい考えだ。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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