モバイルクラウドコンピューティングは2011年に形をとり始めたばかりの新しい市場だが、既に急速な成長時期を迎えつつある。モバイルアプリケーション用APIの標準仕様である「BONDI」や「OneAPI」、そしてHTML5の進展によって、同市場に向けたアプリケーションの開発がさらに加速するとみられる。
市場調査会社である英国のVisiongainは、最新の経営分析リポート「Mobile Cloud Computing Industry Outlook Report: 2011-2016」で、モバイルクラウドコンピューティング市場を分析し、クラウドコンピューティングに参入する企業が自社の事業戦略やビジネスモデルを成功させるため、モバイルクラウドをどのように活用できるかについて考察している。
モバイルクラウドコンピューティング市場は2011年に形をとり始めたばかりだが、既に急速な成長時期を迎えつつある。同市場への参入に関心を持つ企業が初期参入者のメリットを享受するには、市場戦略の策定を急がなければならない。Visiongainは、クラウド市場全体の売上高が今後急速に伸び、2011年の770億米ドルから2016年には2400億米ドルに達すると予測している。
クラウド市場で成功するには、「ユーザーに価値をもたらす企業」としての地位を確立することが不可欠だ。そうした策を講じなければ、新規参入者に追い抜かれ、利益を大きく奪われることになる。各企業はクラウド市場で勝ち残るため、新しい経済圏の中で最もうまく立ち回れるのはどの点かを見極める必要がある。
クラウドの経済圏に参入するあらゆる企業にとって、企業同士で強固な協力関係を結ぶことが有利な戦略となる。Visiongainは、モバイルクラウドコンピューティング市場がいまだ黎明(れいめい)期にあることから、この市場には重要なパートナシップを築く機会がまだ十分にあると分析している。
Visiongainは、モバイルクラウドコンピューティング市場が2011年から2016年にかけて55.18%の年平均成長率で拡大し、2016年には売上高が450億米ドルに達すると予測している。売上高がこのように大幅に伸びる背景には、スマートホンの普及や3Gネットワーク対応エリアの世界的な拡大、LTEサービスの導入などを通じて、モバイルクラウドの用途が広がるなどの材料がある。
2014年までには、モバイルアプリケーション用APIの標準仕様である「BONDI」や「OneAPI」、そしてHTML5といった技術の進展によって、クラウドベースのモバイルアプリケーションの開発がさらに加速するとみられる。またVisiongainは、オープンな標準規格も、スマートホンに幅広く採用されるようなクラウドベースのモバイルアプリケーションを開発しやすくする要因になるとしている。
ただしモバイルクラウドには課題もある。セキュリティーやプライバシー、実運用可能性や接続性などは、ユーザーとサービス提供企業の双方にとって大きな課題だといえる。それでも多くの企業が、モバイルクラウドという流行に飛びつく形で、複雑かつセキュアな製品を市場に投入しているのが現状だ。
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